民主主義国家において、刑事裁判の記録が、日本みたいに、市民から秘匿されている国が他にあるのだろうか?/ジャーナリスト江川紹子

皆さん天下の大秀才なのでしょうが、腹の据わった裁判官はどこにいってしまったのでしょうね。この国の刑事司法の先行きが本当に心配です/元東京高裁の判事・木谷明が怒りの告発

私が裁判官だった当時から検察の力が強かったのは事実です。それでも昭和40年代前半には最高裁が無罪判決をいくつも出して、下級審も活気がありました。

 私はかなり多くの無罪判決を出しましたが、1件だけしか控訴されませんでした。でも、無罪判決にはたいてい検察官が控訴します。控訴されると無罪判決が破棄されることが多いのも事実です。破棄されない無罪判決を書くには技術が要ります。いろいろな事件で苦労してはじめて一人前の刑事裁判官になると思うのですが、無罪判決を書く苦労をしていない裁判官が多いのは残念なことです。

 その結果、検察に物申すような裁判官が私の現役時代と比べて減ってしまいました。皆さん天下の大秀才なのでしょうが、腹の据わった裁判官はどこにいってしまったのでしょうね。この国の刑事司法の先行きが本当に心配です。

「週刊現代」2013年6月1日号より

引用:PCなりすましネコ男事件連続追及第11弾 元東京高裁の判事・木谷明が怒りの告発 裁判所が検察・警察のいいなりでどうすんの!  | 経済の死角 | 現代ビジネス [講談社]

弁解録取に名を借りて合計3時間半にわたって実質的な取り調べを行いました。これは明らかな違法行為です。/元東京高裁の判事・木谷明が怒りの告発

今回の事件でも検察官は「違法な取り調べ」を片山くんに対して行っています。水庫一浩検事は録画なしには取り調べに応じないという意向を表明している片山くんに対し、弁解録取に名を借りて合計3時間半にわたって実質的な取り調べを行いました。これは明らかな違法行為です。

 しかし、弁護人がその点を指摘して勾留請求の却下を求めたのに、裁判所は「相当性は疑問なしとはしない」としながらも、「違法ならしめるほどの手続き違反があるものとはいえない」などと訳のわからない理屈でごまかしました。裁判官は検察の行為を違法と断定するだけの勇気に欠けているとしか言いようがありません。これはまさに検察の主張を鵜呑みにする「検察官司法」の典型です。

 現在、片山くんは度重なる逮捕で、保釈も認められず落ち込んでいます。当然ですよね。誰だって落ち込みますよ。私も「このまま、判決までずっと保釈されないことはあるんでしょうか」と聞かれました。

 5月10日が誕生日だったので、それまでにはと考えていたようですが、そんなささやかな願いもかなわなかった。6月10日には免許の更新期限がやってくるし、7月は車検の時期なのだそうです。それまでには自由の身になりたいと、なんとか望みをつないでいる状況です。

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「拳銃や覚醒剤は僕には遠い存在ですけど、警察官が平気でウソをつくこと、それについては恐ろしくなりました」/元東京高裁の判事・木谷明が怒りの告発

「拳銃や覚醒剤は僕には遠い存在ですけど、警察官が平気でウソをつくこと、それについては恐ろしくなりました」

 と率直な感想を述べていました。

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捜査機関の違法行為に関連して、片山くんに『恥さらし』という本を差し入れたんです。/元東京高裁の判事・木谷明が怒りの告発

捜査機関の違法行為に関連して、片山くんに『恥さらし』という本を差し入れたんです。この本では、覚醒剤の使用や密売に手を染めていた北海道警察の元警部・稲葉圭昭氏が、赤裸々に罪を告白しています。道警が拳銃押収をでっち上げたり、違法なおとり捜査を行ったりと、組織的に違法捜査をしていたことも克明に記されてあります。片山くんはこの本を読んで、

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捜査機関は時として「違法な捜査」に手を染めることがあります。捏造は論外としても、これまで検察は被告人に有利な証拠を隠してきました。/元東京高裁の判事・木谷明が怒りの告発

また、厚生労働省の村木厚子さんの裁判では、検察官による証拠偽造が行われていました。この件について、私の知っている先輩の裁判官は、「検察官ともあろう者がそんなことをするのか。裏切られた」という反応をしていました。このことからも分かるように、裁判官の多くは、検察が違法行為に手を染めるなどと考えていないのです。

 しかし、捜査機関は時として「違法な捜査」に手を染めることがあります。捏造は論外としても、これまで検察は被告人に有利な証拠を隠してきました。

 実際、44年かけて被告の無罪が証明された「布川事件」でも、昨年無罪となった東電OL殺人事件でも被告人に有利な証拠が隠匿されていたと報道されています。被告人に有利な証拠を隠すことと、不利な証拠を作り出すことは行為としては異なることですが、その性質は同じなのです。

 ただ、その問題に入り込むと、警察、検察という巨大な国家機関に対して、裁判所が真正面から大戦争をしなければならなくなる。それが厄介だということで、裁判官が「捜査の違法性」という根本的な問題を避けているのではないかと、私には思えます。

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なぜ検察がそれに応じないのか。取り調べで検察官のITに関する無知が露呈するのを恐れているのではないでしょうか/元東京高裁の判事・木谷明が怒りの告発

この事件は、これからでもいいので、可視化をして取り調べをするべきです。なぜ検察がそれに応じないのか。取り調べで検察官のITに関する無知が露呈するのを恐れているのではないでしょうか。

 取り調べの可視化が必要だということは、今や社会の常識です。最高検も「可視化は犯罪の立証に有効」との提言を発表しました。ただし、検察が全面可視化に踏み切るかは未知数です。

 一部可視化はすでに進められていますが、これはきわめて問題です。紳士的な取り調べをして、被告が署名している様子だけを見せる。ひょっとしたらその前に強引な取り調べが行われていたかもしれない。検察官と被疑者の間で何かしらの取り引きがあったのかもしれない。しかし、裁判員にその判断はつきません。一部分だけ見て、自白の任意性を認めてしまうことになりかねない。否認している被疑者がどの段階で、どういう経緯で自白に転じたかということを客観的に明らかにしなければ、意味がないどころか、有害ですらあります。

 小沢一郎代議士の「陸山会事件」では、秘書だった石川知裕代議士の供述の捏造が問題となりました。この件は、取り調べの様子を石川代議士がICレコーダーで録音していたから明るみに出た。

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被告人は身柄を拘束されていて、自分で証拠を集めることすらできない。被告人に与えられた権利は、弁護士と接見することと、黙秘権の二つ/元東京高裁の判事・木谷明が怒りの告発

現在は主に冤罪事件を中心に弁護活動を行い、片山祐輔さんの弁護団にも名を連ねている。

 刑事訴訟では「疑わしいときは被告人の利益に」という原則があります。検察による犯罪の証明が十分でないときは無罪にすべきだということですが、この原則を守るのは容易でない。それは検察の力が強すぎるからです。

 検察官は国家権力を背景にあらゆる証拠を入手します。検察が手にした証拠のなかには、被告人に有利なものも含まれています。しかし、検察はそれを被告人や弁護人に簡単には見せません。

 逆に被告人は身柄を拘束されていて、自分で証拠を集めることすらできない。被告人に与えられた権利は、弁護士と接見することと、黙秘権の二つしかないのです。

 そういう意味で検察と被告人では持っている武器がまるで違います。大袈裟に言えば、「大砲と空気銃」ほどの差がある。この両者を対等の当事者だと本気で言っているのだとしたら、世間の人には笑われてしまいますよね。ですが、実際の法廷では両者が対等のものとして裁判が進んでいく。その結果、検察の主張が通りやすくなるわけです。

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<大阪女児焼死>検察実験でも放火は不可能 弁護団が発表/(毎日新聞) – Yahoo!ニュース

毎日新聞 5月29日(水)23時31分配信

 大阪市東住吉区で1995年に女児が焼死した事件の再審開始決定に対する即時抗告審で、元被告の弁護団は29日、検察側の燃焼実験でも、自白通りの放火ができないことを示す結果だったと発表した。大阪地裁は昨年3月、弁護団による同様の実験結果を新証拠と認めて再審を決めたが、「自白通りの放火は可能」と主張する検察側が独自に実験した。弁護団は「検察側が再審開始の根拠を覆すのは難しくなった」としている。

引用:<大阪女児焼死>検察実験でも放火は不可能 弁護団が発表 (毎日新聞) – Yahoo!ニュース