何も、党総裁を辞めろとか、腹を切れなどといった物騒な話ではない。かくも質の低い議員たちを、党総裁の責任において、きちんと教育するために、もっとまともな「勉強会」を開いてもらいたいのだ。安倍首相自身も、「言論の自由」について誤解があるのではないかと思われる発言がこれまでにあったので、一緒に勉強していただけるとなおよい。
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日本の政権与党の議員、それも首相に近い議員たちがかくも質が低いのかと知って、暗然とした気持ちでいる。まさに「政治の劣化、ここに極まれり」といった体である。/ジャーナリスト江川紹子
会合すべてを公開したわけではないが、聞かれているのはわかっていて、それについては暗黙の了解がある。ということは、議員たちは聞かれていても困らない、問題になるようなことはないという認識であのような発言をしたのだろう。現に、「マスコミを懲らしめるには、広告料収入がなくなるのが一番」「経団連だとかに働きかけしてほしい」などと発言した大西英男議員は後日、報道陣の取材に対し、会合での自身の発言について「問題があったとは思いません」と述べている。
政治とメディアの関係や報道の自由などに関して、根本的な理解を欠いていると言わざるをえない。そのうえ、沖縄の普天間基地がどのように作られたのか、住民がなぜその周辺に住まざるを得なかったのかも知らないまま発言をしている。彼らは、インターネット上に転がっている出所不明の情報を安易に信じ込んでいるようだ。
日本の政権与党の議員、それも首相に近い議員たちがかくも質が低いのかと知って、暗然とした気持ちでいる。まさに「政治の劣化、ここに極まれり」といった体である。こういう質の問題は、党幹部の「厳重注意」で改善するものではあるまい。
安倍首相は陳謝する際、一連の発言を「大変遺憾で非常識な発言」としたうえで、「党本部で行われた勉強会だから、最終的には私に責任がある」と自らの責任を認めた。ならば、これで幕引きではなく、責任はきちんととってもらわなければならない。
Aと両親は、他の被害者2人の分も含めて総額約2億円の賠償責任を負った。両親の手記の印税やAの父親の退職金に加え、毎月A自身が1万円、両親が6万円ほどの支払いを続けているが、現在でも1億数千万円の負債が残っているという/ジャーナリスト江川紹子
土師さんが約1億円の損害賠償を求めた民事裁判は、A側が争わなかったため請求通りの金額で判決が確定している。「週刊文春」(文藝春秋社/6月25日号)によると、Aと両親は、他の被害者2人の分も含めて総額約2億円の賠償責任を負った。両親の手記の印税やAの父親の退職金に加え、毎月A自身が1万円、両親が6万円ほどの支払いを続けているが、現在でも1億数千万円の負債が残っているという。
被害者感情に配慮するあまり、人々の知る権利が過小に扱われてはいないだろうか。図書館関係者は、日本図書館協会が採択した「図書館の自由に関する宣言」を読み直してもらいたい/ジャーナリスト江川紹子
『絶歌』については、明石市が書店や市民に「配慮」を求め、泉房穂市長が「遺族の同意なく出版されること自体許されない行為で、加担してほしくない。私個人の思いとしては売らないでほしいし、買わないでほしい」と発言。いくら被害者感情に対する配慮といっても、自治体の長が出版物の販売や購入の自粛を要請する趣旨の発言をするのは尋常ではない。
図書館にも閲覧制限の動きが出ている。明石市図書館では本を購入せず、兵庫県立図書館では貸し出し制限として、「研究目的」に限り館内限定で閲覧を認め、複写は一切認めない、という。
いずれも被害者感情に配慮するあまり、人々の知る権利が過小に扱われてはいないだろうか。図書館関係者は、日本図書館協会が採択した「図書館の自由に関する宣言」を読み直してもらいたい。
遺族が反対している場合は出すべきではないと非難する人もいるが、「元少年A」を表現の自由の埒外に置くか否かという、最高裁裁判官のような重い役割を、遺族に担わせることには賛同できない。/ジャーナリスト江川紹子
江川 紹子 | 2時間前(2015/06/16 22:29) ジャーナリストオーサー 報告
関心がある者は読めばよいし、読みたくない者は読まなければいい。
遺族が反対している場合は出すべきではないと非難する人もいるが、「元少年A」を表現の自由の埒外に置くか否かという、最高裁裁判官のような重い役割を、遺族に担わせることには賛同できない。
そもそも、彼を非難するメディアが騒ぐことで、本の注目度を高め、売り上げを増やすことに貢献しているのではないか?
私は、あれだけの事件を起こした者が、様々な人との関わりの中で、罪の自覚を深めていく記録として読んだ。そこから考えさせられることは少なくなかった。
名古屋で女性を惨殺した女子大生など、「A」を「尊敬」する者による事件が今でも起きている。一部の人たちに「神」扱いされてい「A」も、この本を読む限り、罪の大きさにおののく「ただの人間」。同書が、彼への歪んだ「尊敬」や「憧れ」が色あせるきっかけになれば、と思う。
そのような取り調べの末に「合意」がなされ、弁護人もチェックできず、法廷でも虚偽供述が維持されたら……。このような事態は想定しておかなければならない。これを防ぐためには、可視化するしかないだろう。/ジャーナリスト江川紹子
そのような取り調べの末に「合意」がなされ、弁護人もチェックできず、法廷でも虚偽供述が維持されたら……。このような事態は想定しておかなければならない。これを防ぐためには、可視化するしかないだろう。
今回の法案では、取り調べの可視化に関しても法制化がなされることになっている。しかし、その対象は裁判員対象事件と検察の独自捜査事件(いわゆる特捜事件)のみ。全事件の2%であり、「合意制度」の対象事件は可視化法制化の対象ではない。
「合意制度」を活用する可能性のある事件の被疑者の取り調べは、可視化するべきではないか。少なくとも、音声の録音だけでも行って、その「合意」が適切に行われたと示せるようにしておくべきだ。
司法取引的手法が、捜査に役立つことは、今回のFIFAでよく分かった。犯罪の手口が進化してくれば、新しい捜査手法も必要だろう。ただ、新しい制度を導入する時には、その弱点はできるだけ克服しておきたい。
「可視化なくして『合意』なし」——これを原則にして、日本版の司法取引をスタートさせて欲しい。【了】
注・引野口事件で検察側証人となったB子は、覚せい剤の前歴があり、実刑判決になった。また、美濃加茂市長の事件で、業者のNは、その後、市長の弁護人が融資詐欺の余罪を告発され、そのうち4000万円分が追加起訴されることになって、実刑判決を受けた。
村木厚子さんが巻き込まれた事件では、”共犯者”たちが、村木さんの関与を認める供述調書を作成している。不幸中の幸いで、重要証人が法廷でその調書を覆す証言としたが、捜査段階では検察側ストーリーに沿った供述をするよう、あの手この手が使われていた。/ジャーナリスト江川紹子
■村木事件で暴かれた検察側ストーリーに沿った供述
現在は厚生労働事務次官を務める村木厚子さんが巻き込まれた事件では、”共犯者”たちが、村木さんの関与を認める供述調書を作成している。不幸中の幸いで、重要証人が法廷でその調書を覆す証言としたが、捜査段階では検察側ストーリーに沿った供述をするよう、あの手この手が使われていた。
そのような取り調べの末に「合意」がなされ、弁護人もチェックできず、法廷でも虚偽供述が維持されたら……。このような事態は想定しておかなければならない。これを防ぐためには、可視化するしかないだろう。
今回の法案では、取り調べの可視化に関しても法制化がなされることになっている。しかし、その対象は裁判員対象事件と検察の独自捜査事件(いわゆる特捜事件)のみ。全事件の2%であり、「合意制度」の対象事件は可視化法制化の対象ではない。
「合意制度」を活用する可能性のある事件の被疑者の取り調べは、可視化するべきではないか。少なくとも、音声の録音だけでも行って、その「合意」が適切に行われたと示せるようにしておくべきだ。
そのうえで証言の信用性を吟味した方が、裁判所の判断は誤りにくくなる、と考えるからだ。それはその通りだろう、と私も思う。ただ、そう考えるにしても、取り調べの録音・録画(可視化)をして、「合意」に至るまでに、不正なやりとりがないか、そのプロセスを透明化することは必要ではないか。/ジャーナリスト江川紹子
検察が、自分たちの過ちを素直に認められない状況をそのままにして、「合意制度」に虚偽供述を罰する規定を作っても、あまり意味はないのではないか。
それでも、「裏取引があっても証拠に残らない現状より、取引の事実が裁判で明らかになる方がまし」と、「合意制度」を肯定的に評価する見方もある。取引があったことを顕在化させ、そのうえで証言の信用性を吟味した方が、裁判所の判断は誤りにくくなる、と考えるからだ。それはその通りだろう、と私も思う。ただ、そう考えるにしても、取り調べの録音・録画(可視化)をして、「合意」に至るまでに、不正なやりとりがないか、そのプロセスを透明化することは必要ではないか。
検察側証人となった者が、事実に反する証言をしたからといって、偽証罪に問われた例を、私は聞いたことがない。そうしたケースがないのは、偽証を認めれば、検察はそれに基づいて行った自分たちの起訴や公判活動が間違っていたことも認めざるをえなくなるからだろう。/ジャーナリスト江川紹子
■弁護人と検察官の距離関係
こんな風に、弁護人が検察官と極めて近しい関係にある場合、「合意」内容の真実性や妥当性について、弁護人が十分チェック機能を果たせるだろうか。それでなくても、密室の中で検察官と被疑者が合意に達した時に、そこにおらず、検察側の証拠を見ているわけでもない弁護人が、妥当性を正しく判断できるのか、非常に心許ない、というのに……。
美濃加茂市長に対する判決で、裁判所はN証言の問題を縷々指摘し、「詐欺事件の処分を軽くするため、捜査機関の関心を他の重大事件に向けたり、意向に沿う行動に出たりすることは十分あり得る」として退けた。N証言は虚偽との判断だ。
検察側は控訴しているが、無罪が確定しても、検察がN証言を虚偽と認めることはあるまい。
今でも、法廷で虚偽の証言をした場合には、偽証罪の制裁はある。けれども、検察側証人となった者が、事実に反する証言をしたからといって、偽証罪に問われた例を、私は聞いたことがない。そうしたケースがないのは、偽証を認めれば、検察はそれに基づいて行った自分たちの起訴や公判活動が間違っていたことも認めざるをえなくなるからだろう。
検察が、自分たちの過ちを素直に認められない状況をそのままにして、「合意制度」に虚偽供述を罰する規定を作っても、あまり意味はないのではないか。
美濃加茂市長に対する判決で、裁判所はN証言の問題を縷々指摘し、「詐欺事件の処分を軽くするため、捜査機関の関心を他の重大事件に向けたり、意向に沿う行動に出たりすることは十分あり得る」として退けた。N証言は虚偽との判断だ。/ジャーナリスト江川紹子
■弁護人と検察官の距離関係
こんな風に、弁護人が検察官と極めて近しい関係にある場合、「合意」内容の真実性や妥当性について、弁護人が十分チェック機能を果たせるだろうか。それでなくても、密室の中で検察官と被疑者が合意に達した時に、そこにおらず、検察側の証拠を見ているわけでもない弁護人が、妥当性を正しく判断できるのか、非常に心許ない、というのに……。
美濃加茂市長に対する判決で、裁判所はN証言の問題を縷々指摘し、「詐欺事件の処分を軽くするため、捜査機関の関心を他の重大事件に向けたり、意向に沿う行動に出たりすることは十分あり得る」として退けた。N証言は虚偽との判断だ。
検察側は控訴しているが、無罪が確定しても、検察がN証言を虚偽と認めることはあるまい。