「知る権利」タグアーカイブ

総選挙期間中における特定秘密保護法についての街頭宣伝等の活動に関する日弁連コメント

昨日、特定秘密保護法が施行されたが、同法についてはなお問題点を指摘し、その廃止等を求める取組が各地で行われている。ところで、総選挙期間中において秘密保護法への反対を表明したり廃止を求めたりする街頭宣伝等について、一般的に公職選挙法第201条の5の政治活動の禁止に抵触する可能性があるとの見解が、一部で報じられている。

しかしながら、同条が禁止するのは政党その他の政治活動を行う団体による政治活動であり、弁護士会をはじめこれに該当しない団体が、人権を侵害する法律の廃止を求めて街頭宣伝等をすることは公職選挙法に抵触しない。

また、かかる街頭宣伝等は、特定の候補者に当選を得させる目的の活動でもないから、公職選挙法上の選挙運動でもない。

当連合会は、国民の知る権利を侵害し、国民主権を形骸化する特定秘密保護法の廃止を強く求め、引き続き活動を行っていく所存である。

  2014年(平成26年)12月11日

  日本弁護士連合会

引用:日本弁護士連合会│Japan Federation of Bar Associations:総選挙期間中における特定秘密保護法についての街頭宣伝等の活動に関する日弁連コメント

佐田元真己弁護士(大阪弁護士会)が大阪地検に懲戒請求された問題で、大阪弁護士会は15日、懲戒処分をしないと決定した。

毎日新聞 2014年01月16日 22時04分

 刑事事件の公判で再生された取り調べ映像のDVDをNHKに提供したとして、佐田元真己弁護士(大阪弁護士会)が大阪地検に懲戒請求された問題で、大阪弁護士会は15日、懲戒処分をしないと決定した。DVD提供は違法だと指摘したものの、プライバシーに配慮するなど悪質性はないと判断した。地検はこの決定に不服があれば、日弁連に異議申し立てができる。

 決定書などによると、佐田元弁護士は、傷害致死罪で起訴され、2011年7月に大阪地裁で無罪=1審で確定=となった男性の弁護を担当。公判で検察が提出した取り調べ状況の録画映像が被告の供述調書の内容と食い違っているとして、無罪の決め手になった。

 判決確定後、佐田元弁護士は取り調べの可視化をテーマにしたNHKの取材に賛同し、男性の了解を得てDVDを提供。NHKは男性の姿にモザイクをかけ、昨年4月の番組などで放映した。これに対し、地検は同5月、証拠の目的外使用を禁じた刑事訴訟法違反だとして、大阪弁護士会に懲戒を請求した。

 同会は「刑事訴訟法の解釈では、裁判準備以外の目的を読み取るのは無理がある」とし、DVD提供は証拠の目的外利用に当たると指摘したが、「関係者の名誉やプライバシーが害されていない。可視化議論に資する目的であり、悪質性はない」と結論付けた。

 16日に記者会見した佐田元弁護士は違法判断について、「国民の知る権利に資する行為なのに、形式的にとらえるのはおかしい」と述べた。【服部陽】

引用:取り調べ映像:NHK提供の弁護士「悪質性ない」処分せず – 毎日新聞

情報を入手して報道することを仕事としているマスコミとしては、それに反発するのは、ある意味では当然の反応と言えよう。そこでは、マスコミの「報道の自由」、国民の「知る権利」が侵害されるという点が強く主張される。/郷原信郎弁護士

行政機関の権限の源泉は、行政の遂行に関して、情報を独占することにある。その情報の独占状態は、2001年に「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」が制定され、情報公開制度が拡充されることによって、大幅に緩和されてきた。そして、2006年に公益通報者保護法が施行され、企業の世界においては、内部告発が積極的に行われるようになり、それを奨励することが社会的風潮になってきたが、行政機関の職員も、この法律による保護を受けて内部告発を積極的に行うことになると、行政機関による情報の独占は一層崩れていくことになる。

特定秘密保護法が、行政機関側に秘密を厳格に管理する権限を与え、それを重い罰則で担保することは、このような情報公開制度等による、行政の権限を制約する流れに逆行することになる。情報を入手して報道することを仕事としているマスコミとしては、それに反発するのは、ある意味では当然の反応と言えよう。そこでは、マスコミの「報道の自由」、国民の「知る権利」が侵害されるという点が強く主張される。

引用:特定秘密保護法 刑事司法は濫用を抑制する機能を果たせるのか | 郷原信郎が斬る

そのような刑事司法に対して、マスコミは、これまで十分に批判的機能を果たしてきたであろうか。過去に、過激派等に対する公安捜査の実情に関する問題を指摘した報道がどれだけあったであろうか。「人質司法」など、刑事司法の問題点について、どれだけ指摘してきたであろうか。/郷原信郎弁護士

日本の刑事司法は、事実を否認する被疑者を長期的に身柄拘束する「人質司法」、検察官による証拠の独占など、検察官にあらゆる権限が集中している。そして、検察は、第一次捜査機関の警察とは極めて近い関係にある。

このような刑事司法の実情を考えた時、私は、「刑事司法への信頼」を前提に、特定秘密保護法に問題がないとする意見には、賛成できない。

特定秘密保護法案に関して問題なのは、法案の中身自体というより、むしろ、現行の刑事司法の運用の下で、このような法律が成立し、誤った方向に濫用された場合に、司法の力でそれを抑制することが期待できないということである。

そのような刑事司法に対して、マスコミは、これまで十分に批判的機能を果たしてきたであろうか。過去に、過激派等に対する公安捜査の実情に関する問題を指摘した報道がどれだけあったであろうか。「人質司法」など、刑事司法の問題点について、どれだけ指摘してきたであろうか。直近では、検察の一部が、虚偽の捜査報告書で検察審査会を騙して政治的目的を遂げようとした陸山会事件での「特捜部の暴走」に対して、民主主義を危うくするものとして徹底した批判が行われたであろうか。

検察や警察との「もたれ合い」的な関係によって、刑事司法の歪みを温存してきたという点からは、責任の一端はマスコミにもあるのではなかろうか。そういうマスコミが、「知る権利」「報道の自由」を振りかざして、法案に反対していることに対して、若干の違和感を覚えざるを得ない。

しかも、日本の官僚、行政組織と親密な関係を維持してきた自民党が、昨年12月の衆議院選挙で圧勝して政権に復帰し、今年7月の参議院選挙でも圧勝して、衆参両院において安定的な勢力を維持する政治状況になったことから、行政権限の肥大化、官僚組織による情報の独占に向けて立法が行われることも、ある意味では当然の趨勢と言うべきであろう。

このような政治状況を招いてしまった最大の原因は、昨年12月まで政権の座にあった民主党が事実上崩壊してしまったことにある。それは、第一次的には、民主党の自業自得だ。しかし、政権交代直後から、民主党が「政治とカネ」の問題をめぐる党内抗争に明け暮れる状況になったことには、マスコミも深く関わっている。

その結果できあがった、「単一の価値観に支配される政治状況」の下で、今、行政組織の権限の更なる強化に向けての特定秘密保護法が成立しようとしているのである。

いかに少数野党が抵抗しようと、マスコミがこぞって批判しようと、多くの知識人、文化人が反対しようと、特定秘密保護法が今国会で成立することを阻止することは避けられないであろう。

そういう政治の現実を、重く受け止めるべきではなかろうか。

引用:特定秘密保護法 刑事司法は濫用を抑制する機能を果たせるのか | 郷原信郎が斬る

森担当相は後に、「(取材が)著しく不当な方法と認められない限り、捜索は入らない」と述べたが、不当かどうか捜査当局が決める根っこは変わらない。やはり法案は問題だ。/社説

毎日新聞 2013年11月15日 02時31分
 ◇「配慮」では守れない

 報道の最大の使命は、国民の「知る権利」に応えることだ。私たちが取材や報道の自由を訴える根拠も、そこに根ざしている。

 特定秘密保護法案の国会提出直前、「報道や取材の自由への十分な配慮」が条文に加わった。だが、法案には、捜査当局による捜査手法に限定を加える規定はない。強制捜査を含め、最終的には捜査側の判断次第なのだ。「知る権利」を脅かす恐れが強いと指摘せざるを得ない。

 一つ例を挙げたい。報道機関が特定秘密に指定された情報を入手し、国民に知らせるべきだと判断すれば、報道に踏み切るだろう。その場合、取材源は明かせない。取材源を守ることで、国民の信頼を得ることができ、自由な取材も可能になる。

 一方、捜査側はどう対応するか。家宅捜索で記者のパソコンや携帯電話を押収し、漏えいした公務員を割りだそうとする可能性が高い。そうなれば、多くの取材先に迷惑が及ぶ。記者や報道機関の信頼は地に落ちる。たとえ刑事訴追の段階で、法案の配慮規定に従い記者が起訴されなくてもダメージは大きい。取材先を守れなければ、その後の取材活動は続けられないかもしれない。

 報道機関に家宅捜索が入る可能性が今週の国会審議で取り上げられたが、政府答弁は一貫性に欠けた。森雅子特定秘密保護法案担当相は当初、配慮規定を理由に「入ることはない」と述べたが、谷垣禎一法相や古屋圭司国家公安委員長は、捜索の可能性を否定しなかった。

 実は捜索をめぐる事件が2005年、ドイツで起きた。国家秘密とされるテロリストの情報が月刊誌に掲載されたのだ。ドイツの法律では、記者に証言拒絶権を認めている。だが、捜索を禁じる規定はなく、当局は捜索を行った。その是非が争われ、憲法裁判所は違憲と判断した。

 ドイツでは昨年、刑法や刑事訴訟法が改正され、秘密漏えいがあっても記者本来の仕事である情報の入手や公表ならば、刑事責任は問われず、取材源割り出しを目的とした捜索もできないことになった。

 一方、日本では取材源を秘匿するための記者の証言拒絶権や、差し押さえ禁止の規定が刑事法令にない。そうした状況下で、「そそのかし」のようなあいまいな規定で罰せられる可能性がある。森担当相は後に、「(取材が)著しく不当な方法と認められない限り、捜索は入らない」と述べたが、不当かどうか捜査当局が決める根っこは変わらない。やはり法案は問題だ。

引用:社説:秘密保護法案を問う…報道の自由- 毎日jp(毎日新聞)