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東電OL殺人事件 テレビにも出ないしカネももらわない ゴビンダさんの弁護団 15年間の冤罪法廷で勝ち取ったもの/神山啓史、神田安積、佃克彦の三弁護士

無罪が確定した日、ゴビンダさんはこう言った。「日本の警察、検察、裁判所はよく考えて、悪いところを直して下さい」。弁護団の戦いは、まさにこの三組織の「悪いところ」をあぶり出す作業でもあった。
ものすごい偏見の持ち主

 無実の罪で15年間拘置所に閉じ込められ続けたゴビンダ・プラサド・マイナリさん(46歳)の妻・ラダさん(43歳)は、ネパールからの国際電話で本誌にこう話す。

「ゴビンダは日本での辛い経験からようやく立ち直りつつありますが、時々、眠れない夜があるようです。何よりも、父親(’07年に死去)が生きている間に潔白を証明できず、最後まで会えなかったことを深く悔やんでいます。私たちは家族が揃った幸せと同時に、失った時間の長さを噛みしめています」

 だが一方で、無辜のネパール人に手錠をかけ、身体を拘束し、犯罪者の汚名を着せた当事者たちに、反省の色は見えない。

 ゴビンダさんが強盗殺人容疑で逮捕された’97年当時、警視庁の捜査一課長だった平田富彦氏は、本誌の取材にこうまくし立てた。

「私はいまでもゴビンダは真っクロだと思ってます。無罪判決は司法が世論におもねった結果だ。マスコミはゴビンダの好青年の部分ばかりを報じているが、彼には裏の顔もある。バイト先の店主が『あれは不良外人だ』と言っていた。捜査員は死に物狂いで捜査して、他にも容疑者がいる可能性を二重三重に検証した末に逮捕した。部下に辛い捜査をさせた私が、ゴビンダはクロ、という持論を捨て去るわけにはいかない」

 これは平田氏個人の見解ではない。警視庁はゴビンダさんの無罪が確定すると、龍一文・捜査一課長名でこんな声明を出した。

「司法の判断にコメントする立場ではないが、無罪判決が出たことは真摯に受け止め、今後の捜査にいかしていきたい」

 司法の判断に納得していない、という本音が行間から伝わってくる。

「あの事件では弁護人にものすごく捜査妨害された。ゴビンダを逮捕した晩、弁護人が接見した途端に完全黙秘になった。留置場から(取り調べに)出てこないこともあったが、それも弁護人の入れ知恵。神山、神田、佃の『カンカンツク』ですよ」(平田氏)

 当時、捜査一課の刑事たちはゴビンダについた神山啓史、神田安積、佃克彦の三弁護士を「カンカンツク」と呼んで忌み嫌っていた。このエピソードを聞き、「それはむしろ名誉なことですね」と語るのは、カンカンツクの一角をなした佃克彦弁護士(48歳)だ。

「警視庁の捜査のいちばんの問題点は、早い段階で『ゴビンダが犯人』と決めつけてしまったことです。おそらくトイレ内のコンドーム(後述)で決めた。その後はゴビンダさんを逮捕・起訴できる都合の良い証拠を集めようとした。オーバーステイのネパール人だから与しやすい、という発想は当然あったでしょう」

引用:東電OL殺人事件 テレビにも出ないしカネももらわない ゴビンダさんの弁護団 15年間の冤罪法廷で勝ち取ったもの  | 経済の死角 | 現代ビジネス [講談社]

欧米でも中国・韓国でもなくネパール人で、しかも不法滞在の不良外国人。そんな人間は少々乱暴に扱っても大丈夫だ—。

 警察にも検察にも裁判所にもそんな偏見があり、それが冤罪を生む背景要因になった。佃弁護士はそう考えている。

 そして、警察、検察、裁判所の偏見と15年間戦い続けたのが、他ならぬカンカンツクを筆頭とする弁護団だった。

 その戦いとはいかなるものだったのか。改めて振り返ってみよう。
こんな警察でも検察よりマシ

 まずは対警察。ゴビンダさんには同居する4人のネパール人がいて、全員、ゴビンダさんと同じくオーバーステイだった。

「警察の同居ネパール人に対する取り調べは本当にひどいものでした。仕事が終わると渋谷署に呼びつけ、夜中の3時まで続ける。暴行に加え、職を斡旋するなどの利益供与もあった。

 ネパール人たちはオーバーステイの負い目があるので、呼ばれたら行くしかなかった。警察は彼らの供述調書を取るだけ取って、終わったら強制送還したんです」(佃弁護士)

 この批判に前出の平田元捜査一課長はこう答える。

「参考人と接触すれば人間関係ができる。職がなければそれを斡旋する。人間として当然のことです。被疑者に対する利益供与とは違う。都合のいい供述を得るため? そんなことはありえない」

 だが実際、同居人の一人は、犯行当日ゴビンダさんが殺害現場(アパート喜寿荘の101号室)の鍵を持っていないと知りながら、「ゴビンダは鍵を持っていたが、持っていなかったことにしてくれと、口裏合わせを頼まれた」との供述調書を取られている。その供述を、公判で翻させたのは弁護団だ。

 ゴビンダさんには疑われても仕方がない部分もあった。夜な夜な渋谷の路上で売春していた被害者と、3度、セックスしたことがあった。そして殺害現場のトイレから、ゴビンダさんの精液が入ったコンドームが発見されているのだ。

 疑われる要素は十分にあるからこそ、弁護団にとっても事実審、つまり東京地裁における一審は、正々堂々と戦う場だった。

 そして、弁護団はその戦いに勝った。一審の大渕敏和裁判長に「被告人を本件犯人と認めるには、なお合理的な疑問を差し挟む余地が残されている」と言わしめ、無罪判決(’00年4月14日)を引き出したのだ。

「いくつか乱暴な捜査はあったにせよ、僕は警視庁が悪質極まりない、と言うつもりはない。悪夢はむしろ無罪判決の後、始まったんです」(佃弁護士)

引用:東電OL殺人事件 テレビにも出ないしカネももらわない ゴビンダさんの弁護団 15年間の冤罪法廷で勝ち取ったもの  | 経済の死角 | 現代ビジネス [講談社]

ゴビンダを有罪に—検察が見せた執念は異様とも言えるものだった。

 刑事被告人は無罪判決が出たら即、釈放される。不法滞在だったゴビンダさんは、釈放→ネパールに強制送還、という道筋をたどるはずだった。

 だが東京高検は、東京高裁に「ゴビンダさんの再勾留」を求めた。

 同高裁第5特別部が一度は要請を退けたが、’00年5月8日、同第4刑事部が裁判所の職権による再勾留を決定してしまう。そして、その第4刑事部が控訴審を担当し、わずか7ヵ月後の12月に逆転有罪判決(無期懲役)を下した。

 当時、東京高裁第5特別部の裁判長として検察の要請を退けた木谷明氏(現弁護士)が語る。

「地裁で無罪判決が出た場合、誰が見ても明らかに判決が間違っていない限り、再度の勾留はできないと考えるべきです。無罪判決の時と何も状況が変わらないのにすぐ勾留できるとしたのでは、無罪判決によって勾留状が効力を失うと定めた法律の規定が無意味になってしまう。

 また、高裁が逆転有罪を言い渡した段階でも、被告に土地勘のない場所に被害者の定期券が落ちているなど、最後まで解決できない疑問点が残りました。高裁は、被害者がつけていた手帳が正確だとする検察官の立証に引きずられて、『疑わしきは罰せず』という刑事裁判の大原則に違反し『合理的疑い』を無視したと批判されても仕方がない」

 そう身内からも批判される判決を書いた高木俊夫裁判長は’08年に死去したが、右陪席の飯田喜信裁判官は東京高裁の裁判長、左陪席の芦澤政治裁判官は東京地裁の裁判長と、二人とも「順調に出世している」(佃弁護士)。
カネに無縁な男

 ’03年10月、最高裁が上告を棄却。無期懲役の有罪判決が確定し、万事休したかに思われた。

 だが、そこから弁護団は驚異の粘りを見せる。ゴビンダさんの精子の劣化具合から犯行当日より以前のものだと示す独自鑑定など、新たな証拠を集め、’05年に再審請求にこぎつけた。

「結果的に無罪を確定的にしたのは、再審請求審で弁護側と裁判所の要請により検察が行った、被害者の体内に残っていたDNAの再鑑定でした。それが現場に落ちていた陰毛のDNA型と一致し、被害者と最後に性交したゴビンダさん以外の『真犯人』の存在が浮かび上がったのです。

 でも実は、現状の刑事裁判では、再審請求審をいかに開かせるか、その門戸が非常に狭いんです。その意味では、有罪確定から地道に独自の証拠を集め、裁判所を『やる気にさせた』意義が大きかったと自負しています」(佃弁護士)

 弁護団には佃弁護士が尊敬してやまない主任弁護人がいる。神山啓史弁護士(57歳)である。

引用:東電OL殺人事件 テレビにも出ないしカネももらわない ゴビンダさんの弁護団 15年間の冤罪法廷で勝ち取ったもの  | 経済の死角 | 現代ビジネス [講談社]

見た目からついたあだ名が「法曹界の浜ちゃん(浜田雅功)」。独特の甲高い声と真ん中分けの白髪がトレードマークだ。中央大学法学部を卒業して’83年に弁護士登録、その後は一貫して刑事弁護に携わる。DNA鑑定に詳しく、’10年に冤罪が確定した足利事件の弁護団にも名を連ねた。

 神山弁護士をよく知る法曹関係者が語る。

「マスコミの取材は会見以外受けない。マスコミに露出して裁判に負けて以来、出ないのが勝つためのジンクスになったようだ。

 いまだ独身で、住まいはワンルームマンション。部屋に冷蔵庫がないという噂で、朝食はいつも裁判所でとっている。移動は自転車で、好物は吉野家の牛丼。

 とにかくカネには無縁の人生で、『俺は年間200万円あれば生きていける』と言っていた。相手が司法修習生でも遠慮なくおごってもらうらしい(笑)。

 まあ、言ってみれば刑事弁護の職人ですよ。その分野では誰にも負けない代わりに、他のことにはまるで頓着しない。テレビには出ないし、そもそも被告から弁護料をもらうという発想がない。変人です(笑)」

 佃弁護士は「この15年、ずっと神山さんの背中を追いかけてきた」と言うが、下戸の神山弁護士と酒を酌み交わしたことはない。

 同じく神山氏を慕う神田弁護士を加えた「カンカンツク」。この三人組が、警察と司法の壁を破り、結果的に一人の無実の人間を救ったのである。

「週刊現代」2012年12月1日号より

引用:東電OL殺人事件 テレビにも出ないしカネももらわない ゴビンダさんの弁護団 15年間の冤罪法廷で勝ち取ったもの  | 経済の死角 | 現代ビジネス [講談社]

正義感の発露と言えるだろう。ただ、そういう立場からは、自分が被害者になることは想像できても、自分や身内からオウム信者が出る、ということはイメージしにくいのだと/ジャーナリスト江川紹子

江川 紹子 | ジャーナリスト
2014年3月7日 21時59分

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無罪を主張していた、自作自演の爆弾事件が有罪。しかも量刑は懲役9年。

判決は平田信被告には、きわめて厳しいものとなった。
共犯者に比べて際立って重い
今の平田被告はこんな感じ(イラスト無断転載厳禁)今の平田被告はこんな感じ(イラスト無断転載厳禁)

裁判所も、井上嘉浩元幹部(死刑囚)の証言の信用性については、誇張や変遷があるなどとして慎重な判断を要するとしたが、弁護側が幇助犯としての関与だったと主張していた假谷さん拉致事件では、現場のリーダーだった中村昇元幹部(無期懲役刑を受刑中)、無罪主張の爆弾事件では井上と共に爆弾を仕掛ける現場に行ったS元信者の証言を重視して、平田被告の主張は「信用できない」と一蹴した。

この判決は、共犯者の比べても、格段に重い。同じ事件に関与し、しかも假谷さん事件では被害者を車に押し込み、爆弾事件などでは実行犯の運転手を務めるなど、平田被告よりずっと犯罪への関与が大きいI元信者が懲役6年だったのに比べると、今回の量刑の重さは際立っている。この量刑は、あまりにバランスを欠いているのではないか。
遺族以上に厳しい評価

判決で示されている、他の信者との違いは、「長期間の逃走」だけ。この逃走によって「刑事司法や社会に与えた影響は軽視できず」と指摘している。一方、自ら逃亡生活に終止符を打って出頭したことは「遅きに失した感が否めない」と著しく評価が低い。また、假谷事件で遺族に繰り返し謝罪していること、遺族との間で和解が成立していること、同居していた女性と共に800万円を遺族や教団の犯罪被害者支援機構に支払ったことなども弁護側が情状としてあげていたが、判決はこれについても「被告人が働いて得た金員ではない」「不自然な弁解を続けている」とそっけない。むしろ、遺族の假谷実さんの方が、「記憶に従って誠実に供述していると感じた」と平田被告の反省の姿勢を評価しているくらいだ。
判決の後、裁判所前で感想を語る假谷実さん判決の後、裁判所前で感想を語る假谷実さん

今回の裁判は、オウム事件で初めての裁判員裁判で行われた。加えて、遺族の実さんが被害者参加人として裁判に関わった。実さんの証言や被告人に対する態度は、心打たれるもので、おそらく裁判員たちの心も揺さぶられ、同情し、そして共感したに違いない。一方、迅速な審理の必要もあってだろう、オウムに引き寄せられた者が、なぜ教祖に自分を預けてしまい、自分自身の判断力を失っていくか、というカルト特有のプロセスについては、裁判員たちが判断のための材料が与えられなかった。
信者の依存心を断罪

判決後の裁判員たちの記者会見で、私は2つの質問をした。1つは「オウム犯罪の特徴は何だと思ったか」という点。多くの裁判員から「思考停止」という言葉が出た。裁判の最初に登場した元信者のA子さんの証言が印象深かったのかもしれない。それを聞いて、私は2つ目に「なぜ、そういう状態に陥ったと思うか」と尋ねてみた。
法廷での平田被告。今日は黒のスーツ姿だった(イラストは無断転載厳禁)法廷での平田被告。今日は黒のスーツ姿だった(イラストは無断転載厳禁)

信者の「依存心」を挙げる人が相次いだ。平田被告に関しては、こんな厳しい評価もあった。

「(平田被告は)師を探していた、と言っていた。それが依存だと思う。性格的に誰かに依存していないと生きていけないのでは。自分で判断する思考がないのかな、と思った。(教団の)中では麻原に依存し、逃げている間は女性に依存していた」

「薬物の使用や睡眠・食事などの制約などによる肉体的コントロール」や「出家制度によって帰る場所がなくなった」点を挙げる人もいたが、出家制度についても「(教団の中では)人の言うことを聞いていれば、生活できるから楽」という意見もあり、総じて「思考停止」は「依存心」の強い信者の”自己責任”と考えているようだ。

話を聞いている限り、何らかの事情で、自分や身の回りの人たちも、もしかしたらそういう集団に関わってしまうかも…と考えた裁判員はいなかったらしい。
健全な社会人の正義感の発露

裁判員たちが、いずれもまじめに生活する市民であることは、その話しぶりからもよく分かった。裁判員として審理に関わりながらも夜や休日には仕事をする人もいて、責任感の強さがうかがえた。車いすの女性は「ハンディキャップがあっても、裁判員を務めることができるんだと知っていただきたい」という使命感で連日の審理に望んだ。

今回の厳しい判決は、健全な社会生活を営む人たちの正義感の発露と言えるだろう。ただ、そういう立場からは、自分が被害者になることは想像できても、自分や身内からオウム信者が出る、ということはイメージしにくいのだと思う。だったなおのこと、信者となった人たちが、自分を他者に預けてしまい、思考停止の状況に陥っていくプロセスは、より丁寧に提示していく必要があるだろう。また、教団の武装化の中では、バカバカしい失敗事例が山ほどあった。厳格な戒律や教祖の指示は絶対とする掟がある一方で、幹部や古参信者のそれと矛盾するいい加減でテキトーな部分もあった。このような全体像も見据えるべきだろう。

裁判員の中からも、「高橋克也の話が聞きたかった」「事件に関わった人全員の話を聞いてみたい。麻原にも証人として出てきてほしい」という声も出た。
オウム事件は裁判員裁判になじむか

ところが、通常の裁判より迅速化が求められる裁判員裁判では、審理の効率化が重視される。採用される証人は、裁判員が関わる以前の公判前整理手続きで決定され、公判スケジュールも決められる。過去のオウム裁判では、弁護側が求めれば、カルトに詳しい心理学者や精神科医の鑑定や証言も行われたが、今回の平田裁判ではそれさえ実現しなかった。

曲がりなりにも、死刑囚の証言が法廷で行われたのは、裁判員裁判ゆえだったかもしれない。その点では、メリットもあるのだろうが、それでも、オウム事件の裁判は裁判員裁判にはなじまないのではないか、という思いを私は強くしている。
高橋克也被告の裁判の時期はまだ決まっていない高橋克也被告の裁判の時期はまだ決まっていない

これから公判を迎える2人の被告人、とりわけ假谷事件や地下鉄サリン事件、VX殺人事件、都庁爆弾事件に関わっている高橋克也被告の場合は、事件数も多く、死刑求刑もありうる。より慎重で十分な審理が求められ、果たして裁判員裁判でやるべきなのかどうか、もう一度考えた方がいいのではないか。
江川 紹子

ジャーナリスト

神奈川新聞記者を経てフリーランス。司法、政治、災害、教育、カルト、音楽など関心分野は様々です。

引用:【オウム裁判】平田被告に厳罰(江川 紹子) – 個人 – Yahoo!ニュース

PC遠隔操作事件「片山被告人の身柄拘束は懲役刑よりひどい」 江川紹子さんが批判ー弁護士ドットコム/ジャーナリスト江川紹子

2014年03月06日 18:40

パソコン遠隔操作事件で威力業務妨害罪などで起訴され、東京拘置所に勾留されていた片山祐輔被告人が3月5日、保釈された。逮捕されたのは昨年の2月だから、身柄の拘束期間は1年以上に及んだことになる。

片山被告人の裁判は、地裁の第2回公判が終わったばかりで、本格的な審理はこれからだ。片山被告人は「私は遠隔操作の被害者だ」と主張し、無罪を訴えている。保釈直後に開かれた記者会見でも「私はやってない」と述べ、自らの主張の根拠をしっかりした口調で語った。

その会見には、弁護人経由で片山被告人にインタビューした記事を公開するなど、この事件に関するレポートを精力的に発表しているジャーナリストの江川紹子さんも参加していた。会見が終わった後、1年以上にもわたった片山被告人の勾留について聞いた。

●「裁判所の保釈許可の判断は遅すぎた」

――1年以上となった片山被告人の勾留について、どうお考えでしょうか?

江川紹子さん(以下、江川): 本当に長かったなと思います。それと、やっぱり検察側が少し異常じゃないか、という感じがしますね。

――保釈が決まったあとに検察が特別抗告し、いったん保釈の執行が止められたものの、検察側の手続きミスが判明し、結局、東京高裁によって保釈が許可されました。

江川: それは慣れないことをやるからでしょう。つまり、異常なことをやるから、こういうミスもするんじゃないでしょうか。ふだん、高裁が保釈決定を出しているのに、そんな特別抗告をするなんてことはあまり聞いたことがないですよね。弁護人が特別抗告するのは聞いたことがあるけど。そういう異常なことをやろうとするから、こういうミスをするんじゃないですかね。

南アフリカで、殺人罪で起訴されているオスカー・ピストリウス選手なんかは、たしか昨年2月14日に逮捕されて、22日に保釈されているんですよね。8日間くらいで保釈されているんですよ。

――片山被告人の逮捕(昨年2月10日)と同じ時期でした。

江川: そうなんですよ。

引用:PC遠隔操作事件「片山被告人の身柄拘束は懲役刑よりひどい」 江川紹子さんが批判(弁護士ドットコム) – BLOGOS(ブロゴス)

2014年03月06日 18:40

だから、あのケースとの差があまりにも大きい。やはり日本では、まだまだ「身柄拘束」を、検察が自分たちの有利に運ぶように使っている気がします。彼(片山被告人)なんかは接見禁止もついていましたから、弁護人以外、誰とも会えない、しかも新聞も読めないと。これって、懲役刑よりひどいですよ。

やはり日本の「人質司法」というか、長期間の「身柄拘束」って罰だと思うんですよね。だから、裁判をやる前から罰を加えるということを、もうちょっと改めるべきだと思うんですよね。

今回、ようやく高裁が(保釈許可について)まともな判断をしたけれども、やっぱり遅すぎた気がしますよね。今回の高裁の決定は非常に筋が通っていて、まっとうだと思うので、こういう判断をもう少し早くできるように、裁判所にやってもらいたいと思います。
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引用:PC遠隔操作事件「片山被告人の身柄拘束は懲役刑よりひどい」 江川紹子さんが批判(弁護士ドットコム) – BLOGOS(ブロゴス)

PC遠隔操作事件は検察のやり方、あり方を問われる事件になるだろう。検察庁もそれを分かってるから必死。/谷山智光弁護士


検察庁の強力な味方であることが多い東京高裁ですら是認できなかった保釈却下決定、ということになると思います。/落合洋司弁護士

http://mainichi.jp/select/news/20140304k0000e040247000c.html

東京高裁(三好幹夫裁判長)は4日、被告側の保釈請求を却下した東京地裁決定を取り消し、保釈を許可した。

一般的に、裁判所は、否認事件の場合、検察官立証が終了するまでは、罪証隠滅の恐れを理由に保釈を許可しないことが多いですね。そうであるからこそ、保釈になりたいがために、同意したくない証拠に泣く泣く同意する「人質司法」の弊害が生じてきます。組織犯罪のような特殊な事件を除き、一般人が「関係者への働きかけ」などそうそうできるはずがないのですが、裁判所は、その辺を検察官の言いなりで安易に認定してなかなか保釈を出そうとしない傾向は今なお根強くあります。

では、検察官立証が終了すれば保釈になるかというと、その場合が多いとはいえ、時々、本件のように、検察官立証が終わっても「まだ罪証隠滅の恐れがある」として、ずるずると勾留されることもあります。結局、罪証隠滅の恐れということを抽象的に見て過度に気にし始めればきりがないわけで、さすがに、今回は、抗告を受けた高裁が、裁量逸脱と見て原決定を取り消し保釈を認めたということでしょう。検察庁の強力な味方であることが多い東京高裁ですら是認できなかった保釈却下決定、ということになると思います。

ただ、1000万円という保釈保証金は、伝えられるような被告人の生活状況から、高額に過ぎるように感じられます。

今後は、被告人と弁護人の打ち合わせもしやすくなって、どこまで充実した反証ができるかが焦点になると思います。

追記:

検察官が特別抗告したそうですが、こういった身柄の問題で、検察官が特別抗告までするのは、異例中の異例でしょう。私は、この世界に入って四半世紀たちますが、高裁で保釈許可になった被告人について、検察官が特別抗告までしたという話を聞くのは初めてです。それだけ、この事件への、保釈による影響を危惧しているのだろうと思いますが、立証に自信がないのだろうか、法廷で自信ありげに振る舞っている割には、えらく弱気だな、とも感じますね。

引用:2014-03-04 – 弁護士 落合洋司 (東京弁護士会) の 「日々是好日」

国連で、日本の刑事司法が「中世レベル」と酷評されてしまう理由を、説例を交えて説明します/向原・川上総合法律事務所

2014-02-28 09:35:36
テーマ:法律 裁判
裁判員裁判で発行される、速記録の代わりとなる裁判所の尋問等の録音データは、VistaやXPでしか再生できないとの話が、Facebook上で、我々関係者の間で話題になっています。

裁判員裁判では、被告人質問・尋問関係が終わったら、翌日に弁論しなければならず、その間に弁論要旨を作る必要があるので、非常に困りますね。

もう、法廷で録音させてくれたほうが、どんだけいいか・・・

検察官側は、どうやってるのでしょうね。
もっとも、検察庁には、XPやVistaのPCがゴロゴロあるのかもしれないですね。
なにしろ、弱小の法律事務所(弁護士)とは、そのリソースが全然違いますからね。

ここでハタと気づく。
これは、まさに、刑事裁判の根底にある問題です。

刑事裁判は、まさに、検察庁と被告人側=弁護人側間の戦争に近いといえます。

戦争する以上、武器対等でないと、勝ち目はありません。
かたや戦闘機と爆撃機、かたやタケヤリでは、絶対に勝てません。せめて高射砲ぐらいの武器が欲しいところです。
しかしながら、検察庁と弁護人では、「武器」となるべき証拠収集能力の点で、すでに大きな差があります。
(検察庁)
・自ら指揮命令権をもって警察という実働部隊を手足のように用いて自在に証拠を収集できる
・令状を請求できる(ガサ入れも身体拘束も可能)
・豊富な人員と物量により、しかも税金で運営されているため、採算度外視で分析可能(予算はあるでしょうが)
(弁護人)
・集められた証拠のオコボレだけを開示されるのが原則
・弁護人がようやっと見つけた証拠であっても、検察官が「不同意」という権限はあるから(弁護人も検察官提出証拠に対して不同意する権限はあるが)、それが実質的に提出できない=法廷に顕出しない、ということもある
・弁護士法23条の2に基づく照会手続もあるが、時間と手間がかかる
・人員は1名が原則、裁判員裁判でも2名まで
つまり、開示された証拠の矛盾点を衝くという作業が中心にならざるを得ない弁護人。
しかも、柱となる証拠が「供述調書」であることも少なくありません。
そして、この調書の作成過程に問題があっても、書面上はそんな問題については当然まともに書かれているわけがありません。そこで、作成過程の録画録音を見たくなります。

ところが、我が国では、作成過程の録画=取り調べの可視化=は基本的にされていません。
(韓国ではされている)そして、警察段階では、今でもされる見通しがまったく立ちません※。
※日弁連が折衝しているが、警察段階での録画(可視化)は当面断念する方向だそうです。

この時点で、日本の刑事裁判が、武器対等になっていないということが、非常に問題があるように思います。
こういう構造を極大化すると、こういうことが生まれ得ます。
というか、こういう事件ってのはあると思います。

捜査「あいつ犯人じゃねーか!?」という見込み
       ↓逮捕状請求(見込みだけでは令状出ないのが建前だが・・・)
被疑者逮捕
被疑事実を否認
       ↓実名報道
捜査機関→マスコミ経由でプロフィール晒される
しかも「容疑者は容疑を否認している」と、最初から犯人なのになぜ否認してんだよという受け取られ方をしても仕方ない状態になる
       ↓取り調べ
勾留決定、ついでに接見禁止=家族と会えない
       ↓家族と会えない状態での取り調べが続く
捜査「うーん、証拠が足りんねえ。よーし、ガサ入れやっちゃうぞ」
       ↓捜索差押令状請求
ガサ入れ
エロ本やエロビデオ(それもアブノーマルなの)が多数採取される→証拠A
同時に、被疑者が犯人ではないことを示す事情も採取される→証拠B
       ↓
捜査機関→マスコミ経由で証拠Aが晒される
       ↓
被疑者、社会的に死亡
被疑者家族、心労にあう
       ↓取り調べ
被疑者、娑婆のこうした実情を耳にして、心理的に強い圧迫を受けるとともに、絶望感を抱く
(人によってはこの段階で自殺するパターンもありうる)
       ↓
捜査機関「それでも落ちん!よっしゃ家族行ったれ」
       ↓
捜査「息子さんに何か言いたいことはない?お母さん」
母「接見禁止で会えないのでなんともいえません・・・」
捜査「もしやってたとしたらどう思います?」←「やっている」という仮定に基づいて答えを誘導
母「やってたのならちゃんと償ってほしいですが・・・」(当然そう答えるよな)
       ↓調書作成
母の供述調書「私は、今回の事件で、ショックで、体調がとても悪くなりました。毎日マスコミがやってきて、病院にもちゃんと行けておらず、家で寝ていますが、立っているのもやっとの状態です。息子が、もし悪いことをしていたのなら、それはいけないことなので、きちんと罪を償ってもらいたいと思っています」
       ↓取り調べで被疑者(息子)に見せる
捜査「お母さんはこう言ってるらしいぞ?もう楽になったらどうだ」
       ↓
被疑者、自白
       ↓
報道「容疑者が罪を認めました!」
  おきまりのプロファイル崩れのプロフィール晒し報道本格化
  2ch祭り状態
       ↓
公判請求
証拠調べ請求→証拠Aだけを提出
          証拠Bは提出せず
       ↓
弁護人=証拠Aしか開示請求できないのが原則(刑訴299)
      証拠Bは日の目を見ず握りつぶされる
       ↓
判決:有罪

こういうことなんですよね。
捜査機関にロックオンされてしまうと人生終了。

どこをどうするべきか、というのは、あまりにも多すぎますね。
ただ、根本的な問題は、やはり、「武器対等」これが確保されていないということに尽きるのではないでしょうか。

冒頭述べたように、裁判とは戦争に似ていると思います。リソース勝負です。
特に刑事裁判は、その物量に圧倒的な差があることを、市民の皆さんにも意識してもらいたいなと思います。

ついでにいえば、上記の説例で、もし「無罪」になったとき。
もしくは、証拠不十分で公判請求されず「不起訴」となったとき。
この被疑者は、エロ本・エロビデオを晒され、自分の性癖を晒され、一旦は犯人扱いされたわけです。そして、今の時代は、ネットで炎上状態になったりしますので、それは未来永劫残ることになりますから、社会復帰には相当な困難が伴います。
そうした場合のケアは、「無罪」の場合は、刑事補償請求で、金銭的解決が図られますが、「不起訴」の場合は、国賠を起こすしかありません。が、捜査機関の捜査の不適切さを違法レベルまで持っていくことは、なかなか大変です。
ネット炎上状態については、ケアはされません。

そう考えたら、ひどいなあと思います。

引用:国連で、日本の刑事司法が「中世レベル」と酷評されてしまう理由を、説例を交えて説明します|弁護士法人 向原・川上総合法律事務所/福岡の家電弁護士のブログ

PC遠隔操作事件、検察の不自然な“秘密主義”/落合洋司弁護士

PC遠隔操作事件、検察の不自然な“秘密主義” – 週刊プレイボーイのニュースサイト – 週プレNEWS http://wpb.shueisha.co.jp/2014/01/30/24621/3/

社会・世相・時代の参考情報/PC遠隔操作事件/PC遠隔操作事件、検察の不自然な“秘密主義”落合洋司弁護士(東京弁護士会)

性犯罪を犯す人の方が最低だと思います。/小倉秀夫弁護士