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現行の目的外使用禁止規定がある限り、弁護士が事件の問題点を世に問いたいと考えても、報道機関など第三者に証拠を見せることができない。一方で検察は、捜査や公判立証への批判を封じるため、この規定を嫌がらせや圧力として便利に使うことができる。/落合洋司弁護士

毎日新聞 2013年06月24日 東京朝刊
 ◇検察に便利な禁止規定−−検察官出身の落合洋司弁護士(東京弁護士会)

 今回のケースは誰の権利も侵害せず、審理の公正も害していない。形式的な法令違反はあったのかもしれないが、国民に取り調べの状況や可視化の重要性を知らせるという公益上の必要性は大きい。

 現行の目的外使用禁止規定がある限り、弁護士が事件の問題点を世に問いたいと考えても、報道機関など第三者に証拠を見せることができない。一方で検察は、捜査や公判立証への批判を封じるため、この規定を嫌がらせや圧力として便利に使うことができる。法廷で調べられた証拠は社会の共有財産という側面もある。プライバシーへの配慮は必要だが、現行の規制は過剰であり、正当な目的による提供は許容するよう法改正すべきだ。

 NHKが放送を取りやめたら、DVDを提供した弁護士、提供を了承した元被告の意思を無にすることになる。NHKは悪法と闘う勇気を持たねばならないと思う。

引用:取り調べDVD:映像提供問題 識者の話- 毎日jp(毎日新聞)

取り調べの可視化が議題になっているのは、そこに多くの疑問が投げかけられているからだ。しかし残念ながら、その「実態」を国民が知る機会はほとんどない。そもそも十分な情報があれば、弁護士がこういったことをする必要はなかったともいえる。/(弁護士ドットコム) – Yahoo!ニュース

「証拠の目的外使用」ではあるものの、公益性が高く、実害は少ない

「今回の件は確かに、検察の指摘どおり『証拠の目的外使用』に該当するでしょう。また、この弁護士は『目的外使用をしない』という誓約書を検察に提出しています。したがって『検察の抗議はやむを得ない』と考えます」

――では、今回の映像提供は「ダメだ」といえるのか。

「難しい問題で、単純に『悪い』とは言いきれません。誓約違反をした人に対してどんな措置を行うかは、行為の目的や証拠の内容なども考慮して決めるべきではないでしょうか。また、報道の自由という観点も忘れてはいけないと思います」

――具体的にはどういう点を考慮しろということか。

「まず目的ですが、弁護士があえて証拠の『目的外使用』をしたのは、『取り調べの実態を明らかにする』ためでした。取り調べの実態は、国民の関心事である『取り調べの可視化』を議論するための、前提となる情報です。これを広く知ってもらうことは、公の利益にかなうと言えるでしょう」

――証拠の内容については?

「考慮すべきポイントは、次の4点です。

(1)本件証拠のDVDは、実際に法廷で開示されたものである

(2)放送時期は無罪判決確定後であり、裁判に影響がない

(3)関係者の了解を得ている

(4)弁護士はNHKから対価を得ていない」

――では、結論としては、どう考えるか。

「今回弁護士が行った情報提供が『公益目的』だったことや、証拠がすでに終わった裁判で開示されていたことなど、諸事情を総合的に考えると、検察が懲戒請求をしたのは行き過ぎと考えます」

大和弁護士はそう結論づけたうえで、「私自身は『国民に開かれた司法』の理念やえん罪の防止の観点から、取り調べは可能であれば全面可視化した方が良いと思っています」と付け加えた。

取り調べの可視化が議題になっているのは、そこに多くの疑問が投げかけられているからだ。しかし残念ながら、その「実態」を国民が知る機会はほとんどない。そもそも十分な情報があれば、弁護士がこういったことをする必要はなかったともいえる。プライバシーへの配慮や裁判への影響排除は大前提だが、国にはより積極的な情報提供をお願いしたい。

【取材協力弁護士】
大和 幸四郎(やまと・こうしろう)弁護士
佐賀県弁護士会。2010年4月~2012年3月、佐賀県弁護士会・消費者問題対策委員会委員長。佐賀大学経済学部非常勤講師。借金問題、刑事・離婚事件など実績多数。元「西鉄高速バスジャック事件」付添人。
事務所名:武雄法律事務所
事務所URL:http://www.takeohouritu.jp/

弁護士ドットコム トピックス編集部
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大和幸四郎弁護士プロフィール

最終更新:6月21日(金)11時15分

弁護士ドットコム

引用:過去の裁判で使われた「取り調べ映像」 報道番組で流すのはNGなのか (弁護士ドットコム) – Yahoo!ニュース

検察庁が、関係者に縛りをかけ問題を封殺し、発覚すれば上記の記事のように懲戒申立をして嫌がらせをするなど圧力をかけるネタになるだけでしょうね。/落合洋司弁護士

http://osaka.yomiuri.co.jp/e-news/20130530-OYO1T00289.htm?from=main2

弁護士は判決確定後、男性の承諾を得てDVDをNHKに提供。NHKは4月5日の報道番組「かんさい熱視線」で、男性の顔をぼかし、音声を変えてこの映像を放送した。可視化問題を巡り、実際の取り調べ映像がテレビで放送されたのは初めてだった。

読売新聞の取材に対し、検察幹部は「証拠の目的外使用は明らかで、上級庁とも検討して懲戒請求が相当だと判断した」としている。これに対し、弁護士は「DVDは公開の法廷で再生され、裁判員や傍聴人もみている。誰の名誉も利益も害していない」と話している。

問題点については、先日、

NHK 大阪地検激怒で「取り調べ可視化」番組を放送延期した

http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20130527#1369635932

でコメントした通りですが、現行の規定がそのまま改正されなければ、確定した事件(その中には問題があり今後、再審申立を考えているといったものもあるでしょう)について、問題を広く世に問いたいと考えたような場合でも、証拠は、報道機関を含め第三者には誰にも見せることすらできない、ということになり、検察庁が、関係者に縛りをかけ問題を封殺し、発覚すれば上記の記事のように懲戒申立をして嫌がらせをするなど圧力をかけるネタになるだけでしょうね。

証拠というものは、特に法廷で取調べられたものは、社会で共有すべき財産のような側面があり、もちろん、プライバシー、名誉等々の利益に対する配慮、措置は必要ですが、確定後であっても、一切、誰にも見せることすらできない、といった規制は過剰過ぎると思います。

検察庁は、単に嫌がらせをして圧力をかけているだけのつもりだと思われますが、これを契機に、この規制の問題点についての認識、批判が広がり、改正へとつながる、1つの大きな切っ掛けができたという側面は重視すべきだと思います。日弁連も、弁護士政治連盟で政治家と飲んだり食ったりしているだけが能ではなく、こうした問題をきちんと伝え、改正へと動くべきでしょう。

引用:2013-05-30 – 弁護士 落合洋司 (東京弁護士会) の 「日々是好日」