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佐田元弁護士らは、「結論はともかく、内容は評価できない。この議決は、『証拠の目的外使用』問題の終わりではなく、始まりだ」と述べている。/ジャーナリスト江川紹子

書きました~ →「品位」を問われるべきはどちらか~証拠の「目的外使用」で弁護士会の審尋開かれる/ジャーナリスト江川紹子

刑事事件で捜査機関が公費を投じて集めた証拠は国民の財産である。これを前提に公益を目的とした証拠の利用の在り方を幅広く論議する契機/北海道新聞[社説]

検察開示証拠 公益利用を認めてこそ(8月17日)

 刑事事件で捜査機関が公費を投じて集めた証拠は国民の財産である。これを前提に公益を目的とした証拠の利用の在り方を幅広く論議する契機とすべきだ。

 検察が開示した取り調べ映像を弁護士がNHKに提供したのは刑事訴訟法が禁じる証拠の目的外利用に当たるとして大阪地検は、大阪弁護士会にこの弁護士の懲戒を請求した。

 報道目的という公益性などから懲戒請求は著しく合理性を欠く。暴挙と言わざるを得ない。

 請求については、外部委員も加わった弁護士会内の委員会が調査、審議する。適正な判断を期待したい。

 映像は傷害致死罪に問われた男性の取り調べの記録で、裁判員裁判の法廷で再生された。検察官作成の調書は信用できないとして無罪が言い渡され、この判決が確定した。

 NHKは4月、取り調べの問題点を取り上げた関西地方の情報番組で映像の一部を放映した。男性らが特定されないような処理をしている。

 どこに問題があるというのか。

 確かに刑訴法は検察が開示した証拠の複製などを弁護士らが訴訟準備など本来目的以外で他の人に見せたり、渡したりするのを禁じている。大阪の弁護士の行為が形式的にこれに触れる可能性は否定できない。

 しかし、目的外利用をした場合でも懲戒請求などの乱用を防ぐ規定があるのを忘れてはならない。

 証拠が公開法廷で調べられたか、プライバシーなどの侵害はないかなどを考慮するというもので、地検の措置は権利の乱用にほかならない。

 目的外利用の禁止規定は2004年の改正で新設された。公判前に検察が被告側に証拠を開示する制度の導入に併せ、個人情報が含まれる証拠がインターネットで公開されるなどの弊害を防ぐためとされた。

 だが、目的外利用を一律に禁止しているため、当時の国会審議でも被告の防御権や報道の自由の観点から懸念や批判が相次ぎ、政府案を修正して乱用防止規定が加えられた。

 衆参両院の法務委員会は「(規定解釈は)国会論議を十分斟酌(しんしゃく)する」(衆院)などの付帯決議をした。

 今回の懲戒請求はこれを踏みにじるもので、国会は法案修正の不十分さを重く受け止める必要がある。

 報道や学術研究などで、取り調べの在り方など刑事司法制度の問題点を明らかにする。無実を訴える被告や弁護士が広く支援を呼びかける。

 こうした目的での証拠の提供や利用を明確に認める法改正が必要だ。判決が確定した刑事裁判の記録を閲覧、コピーできる制度はあるものの、これだけで十分とは言い難い。

 一連の経緯を考えれば立法府である国会主導で論議を進めてほしい。

引用:検察開示証拠 公益利用を認めてこそ(8月17日)-北海道新聞[社説]

最近某ジャーナリスト女史をはじめとして「裁判証拠の目的外使用の全面自由化」を求める声が/感熱紙


こんなん書きました →憲法の視点を忘れてはいけない~証拠の「目的外使用」を巡って/ジャーナリスト江川紹子


「憲法の番人」とも言われる最高裁で、様々な憲法判断をしてきた滝井弁護士。今回の検察の対応に対し、/ジャーナリスト江川紹子

法廷で再生された取り調べDVDをNHKに提供したのは、刑事訴訟法が禁じている証拠の「目的外使用」だとして、大阪地検に弁護士が懲戒請求された件では、大阪の刑事事件に精通した弁護士らが代理人団を結成。大阪弁護士会綱紀委員会に意見書を提出した。その際、代理人の筆頭に名前を記されたのが、かつて最高裁裁判官を務めた滝井繁男弁護士だ。
滝井繁男弁護士滝井繁男弁護士

滝井弁護士は、大阪弁護士会会長などを経て、2002年6月11日から2006年10月30日最高裁裁判官となった。裁判官として、利息制限法の規定を超える消費者金融のいわゆるグレーゾーン金利を否定し、過払い金返還訴訟への道を開いて多重債務者を救済したことで知られる。水俣病関西訴訟で国などの責任を認める判決に関わったほか、参院選定数訴訟では「1人の投票価値が他の人の2倍を超えることは、いかなる理由でも正当化できない」との反対意見を書いた。

「憲法の番人」とも言われる最高裁で、様々な憲法判断をしてきた滝井弁護士。今回の検察の対応に対し、「法律ばかり見て、憲法をないがしろにしている」と指摘した。

引用:憲法の視点を忘れてはいけない~証拠の「目的外使用」を巡って(江川 紹子) – 個人 – Yahoo!ニュース

大阪地検は今回、なぜ懲戒請求に踏み切ったのか。目的外使用禁止の意味や、報道の自由との関係をどう考えているのか/日下部聡- 毎日jp(毎日新聞)

◇検察の情報管理 官僚主義の表れ

 政党機関紙を休日に配布したとして国家公務員法違反の罪に問われ、昨年最高裁で無罪が確定した元社会保険庁職員の事件では、1審公判で再生された証拠映像を弁護団が05〜06年にメディアに提供したが、懲戒請求はなかった。

 大阪地検は今回、なぜ懲戒請求に踏み切ったのか。目的外使用禁止の意味や、報道の自由との関係をどう考えているのか。スポークスマン役でもある上野友慈次席検事に取材を申し込んだ。しかし、返ってきたのはファクスによる1枚の回答文だけだった。理由や見解を求めた部分に対しては、いずれも「お答えは差し控えたい」。答えを控える理由や面談に応じない理由について再度質問したが、次席は事務官を通じて「ファクスでお送りした以上のことは差し控えたい」と言うのみだった。検察にも主張したいことはあるはずだ。検察担当ではない記者に対しても顔を見せて堂々と説明してほしい。

 検察の考え方がにじむ文書がある。元社保庁職員の控訴審で東京高検が東京高裁に提出した意見書だ。新たな映像の開示命令を高裁に求める弁護側の主張に「弁護人は目的外使用に及ぶ蓋然(がいぜん)性(確率)が高い」と反対し、「被告側が(証拠の)適正な管理に十分に意を用いるべきことは当然」「管理の適正を欠くということであれば、証拠開示の範囲が限定される恐れがある」などと主張した。証拠が自らの管理を離れることへの強い警戒感が表れている。

引用:記者の目:取り調べ映像提供で懲戒請求=日下部聡- 毎日jp(毎日新聞)

。英国では検察が証拠や調書などをメディアに直接提供できる協定があり、規定に「司法手続き公開の原則を保つことを目指す」との目的が掲げられている。/日下部聡- 毎日jp(毎日新聞)

◇公益目的の使用認める法改正を

 今回、大阪地検が問題視した映像は終わった裁判の記録(確定記録)だ。確定記録は、日本では刑事確定訴訟記録法に基づいて検察庁が管理し、閲覧はなかなか許可されない。メディアや市民が過去の裁判を検証しようと思っても難しい実態がある。しかし、多くの欧米諸国では確定記録は裁判所で誰でも閲覧できる。また、米連邦裁判所が運用するデータベース「PACER」では、手数料を払えば誰もが全米の刑事・民事の訴訟記録をインターネットで閲覧できる。英国では検察が証拠や調書などをメディアに直接提供できる協定があり、規定に「司法手続き公開の原則を保つことを目指す」との目的が掲げられている。

 NHKは問題の映像を全国放送で流す計画を延期している。訴訟記録は国民の共有財産との原点に立ち、臆することなく放送してほしい。

 証拠の目的外使用禁止は、皮肉にも「開かれた司法」を掲げた司法制度改革で導入された。検察の証拠開示範囲が広げられたことに伴い「乱用を防止するため」(政府の国会答弁)との理由だ。だが、元社保庁職員の主任弁護人だった石崎和彦弁護士は「何が『乱用』にあたるのか、きちんと詰められていなかった」と指摘する。

 最低限、報道や研究など公益目的の場合は使用を認める法改正が必要であろう。確定記録の管理を裁判所に移し、国民がより司法にアクセスしやすい制度に変えることも併せて考える必要がある。(大阪社会部)

引用:記者の目:取り調べ映像提供で懲戒請求=日下部聡- 毎日jp(毎日新聞)

捜査機関といえども、国民が税金で雇う公僕である。彼らの集めた資料は最終的には国民にも共有されるべきではなかろうか/日下部聡- 毎日jp(毎日新聞)

記者の目:取り調べ映像提供で懲戒請求=日下部聡

毎日新聞 2013年07月19日 00時49分

 しかし、捜査機関といえども、国民が税金で雇う公僕である。彼らの集めた資料は最終的には国民にも共有されるべきではなかろうか。意見書に、そうした意識は感じられない。「大衆に余計な情報を出すと面倒なことになる」というエリート意識や官僚主義のようなものが潜んでいるようにも思える。東京電力福島第1原発事故の際、国民のパニックを懸念して放射性物質の拡散予測の公表を遅らせた政府の対応にも通じる。

引用:記者の目:取り調べ映像提供で懲戒請求=日下部聡- 毎日jp(毎日新聞)

公判では、被告や被害者の個人的な事情も明かされる。それでも公開が優先されるのは、公権力が密室で恣意(しい)的に市民を拘束し、処罰してきた歴史への反省があるからだ。/日下部聡- 毎日jp(毎日新聞)

記者の目:取り調べ映像提供で懲戒請求=日下部聡

毎日新聞 2013年07月19日 00時49分
 ◇公開制限の規定に問題

 刑事事件の公判廷で証拠として再生された取り調べの録画映像をNHK番組に提供したとして、大阪地検が5月、佐田元(さだもと)真己弁護士(大阪弁護士会)を同弁護士会に懲戒請求した。請求の直接の根拠は、刑事裁判の被告と弁護人に対し、検察が開示した証拠の「目的外使用」を禁じる刑事訴訟法281条の規定だ。形式的には抵触するのかもしれない。しかし、佐田元弁護士は「国民全体で取り調べの可視化を議論するには、多くの人に現場の映像を見てもらう必要があると考えた」と話す。法廷を傍聴できる人数は限られる。憲法が定める裁判公開の原則に照らせば、証拠の法廷外での公開を制限する規定にこそ問題がありはしないか。

 2004年の同法改正で、この規定が導入された時も、国会は「裁判公開の原則に配慮する」との付帯決議をしている。公判では、被告や被害者の個人的な事情も明かされる。それでも公開が優先されるのは、公権力が密室で恣意(しい)的に市民を拘束し、処罰してきた歴史への反省があるからだ。

引用:記者の目:取り調べ映像提供で懲戒請求=日下部聡- 毎日jp(毎日新聞)