こういう主張の根底には、証拠が「検察官のもの」であり、弁護士には信頼関係に基づいて特別に見せてやる、という発想があります。そもそも、その発想がおかしいんです。証拠は「検察官のもの」ではない。国民の共有財産です。/(江川 紹子) – 個人 – Yahoo!ニュース

証拠は「検察官のもの」ではない

ーー検察からは何らかのアクションがあったのですか?

4月17日に、大阪地検刑事部の検事から電話がありました。いきなり「DVDをNHKに提供したんですか」という不躾な質問だったので、「電話で話せるようなことではない」と言って、19日に私の方から検察庁に出向きました。無視していれば、家宅捜索や逮捕される事態も考えられました。刑訴法では、弁護士も開示証拠を提供して「対価」を受け取っていれば罪に問えます。私は対価は受け取っていませんが、強制捜査はそういう「疑い」だけで可能ですから。

1時間くらい、すべて正直に話しました。NHKの番組の趣旨に賛同したこと。そして、取り調べの可視化の問題は、僕ら法律家にとってはポピュラーな議題だが、本来はもっと国民的な議論にならなければいけない、ということ。国民の大多数は取り調べを受けたことはなく、取り調べがどういうもので、なぜ可視化がどうしても必要なのか、なかなか実感を持ちにくいはずです。再現ドラマではなく、現実の取り調べがどういうものか、見ていただく必要があると思った、という意見を述べ、議論になりました。

ーー検察官はなんと?

以前より広い範囲の証拠開示を認めるようになったのは、弁護士との信頼関係に基づくもので、この信頼関係を無視する行為ではないか、と言っていました。今回の懲戒請求書にも、「検察官は、弁護士を信頼し、証拠開示を行っているものである」として、私がDVDを提供したことで「弁護士に対する期待・信頼を大きく失墜させる」と書かれています。

こういう主張の根底には、証拠が「検察官のもの」であり、弁護士には信頼関係に基づいて特別に見せてやる、という発想があります。そもそも、その発想がおかしいんです。証拠は「検察官のもの」ではない。国民の共有財産です。特に、本件では裁判は終わっており、審理への影響はない。ならば、国民の知る権利を考え、こうした証拠を含めた記録には、国民がアクセスできるようにすべきです。しかし、こういうことを話しても、検事からはスルーされてしまいました(苦笑)。

話を終え、「また何かお願いすることがあるかもしれません。そうなったら連絡します」と言われて検察庁を出た後、何も連絡はありませんでした。懲戒請求も、検察庁からは何も知らされていません。

引用:【裁判記録は誰のものか】「これは国民の知る権利の問題です」(江川 紹子) – 個人 – Yahoo!ニュース