実際、これまでにも、刑の軽減を狙って嘘の証言で”捜査協力”をしたとみられるケースはいくつもある。/ジャーナリスト江川紹子

ただ、これを導入すれば、刑を軽くしてもらおうと、嘘の証言をして、無関係の人を事件に巻き込んだり、他人の関与を実際以上に重く見せる輩が出て来くるだろう。

実際、これまでにも、刑の軽減を狙って嘘の証言で”捜査協力”をしたとみられるケースはいくつもある。

その典型が、2004年に福岡県北九州市起きた引野口事件。火災の焼け跡から見つかった男性の胸に刺し傷があったことから、放火殺人事件として捜査が行われ、被害者の妹のA子さんが逮捕された。A子さんは否認を貫いたが起訴され、裁判で無罪を主張。

その裁判で、警察の留置場で同房だったB子が、検察側証人として出廷し、A子さんから「兄の首を刺した」と告白された、と証言した。B子は、覚せい剤中毒のうえ、窃盗の余罪が多数あったが、起訴されたのは2件だけ。自分の弁護人に「警察に協力したから(私には)今回も執行猶予がつく」と話していた、という。

裁判で、A子さんは無罪となり、裁判所は判決で、B子供述について「代用監獄への身柄拘束を捜査に利用したとの誹(そし)りを免れない」と警察を批判した。捜査機関がB子を利用して、虚偽供述をさせていたことを認めた格好だ。

こんな風に、被疑者は自分の罪を軽くしたい、捜査機関は有力な有罪証拠が欲しい、という両者の利害が一致して虚偽の証言がなされ、冤罪につながる心配は、「合意制度」にもある。

引用:【江川紹子の事件簿】FIFA汚職と刑事訴訟法改正案──改めて問われる取り調べ可視化 – Mulan