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犯人からのメールには捜査機関に補捉されないための注意深さが感じられますが、片山氏の行動は、あまりにも無防備なんですよね。逮捕直前のマスコミの尾行にも、まったく気がついていない。/特別対談佐藤博史×江川紹子

江川 同種の事件で前科があることや、犯行声明メールにあった雲取山、江ノ島に実際に行っているなど、彼を疑いたくなる要素は、確かにいくつもあります。

 一方で、彼が犯人だと考えると変な点も複数あります。真犯人が送ってきたメールの一部には、ハングル文字が使われていました。しかし、片山氏がハングルに詳しいという話はない。また、犯人からのメールには捜査機関に補捉されないための注意深さが感じられますが、片山氏の行動は、あまりにも無防備なんですよね。逮捕直前のマスコミの尾行にも、まったく気がついていない。犯人像と片山氏の行動がどうも噛み合わないのです。

引用:連続追及 第10弾PCなりすまし事件 特別対談佐藤博史×江川紹子 警察と検察 史上最悪の「冤罪捜査」を問う  | 経済の死角 | 現代ビジネス [講談社]

江川 捜査段階で、捜査に関する疑問や問題点がここまで出てきたのは、佐藤先生が体を張った弁護をしてきたからなのは間違いないですね。/特別対談佐藤博史×江川紹子

決定的画像なんてない

江川 捜査段階で、捜査に関する疑問や問題点がここまで出てきたのは、佐藤先生が体を張った弁護をしてきたからなのは間違いないですね。

佐藤 その結果だと思いますが、警察・検察側に決定的な証拠はないことが明らかになったと思います。1月3日の午後3時頃に江ノ島のネコに首輪(真犯人しか知り得ない情報を入れた記録媒体が取り付けられていた)を付けたのが片山さんであるというのが逮捕の端緒だったはずなのに、今でもその画像さえ出てこないのですから。

江川 捜査側が手の内を晒したくないと考えて、証拠を温存している可能性もありますが、ただ、私も、片山氏が首輪を付ける決定的な場面の画像はないと思います。私も現地で確かめましたが、当該のネコがいたという山頂付近にはカメラは1台しかありませんし、解像度は高いにせよ、画角はそれほど広くありません。そのうえ、当日は多くの人で混雑していました。

佐藤 にもかかわらず、報道では片山さんがネコに首輪を付けて、その写真をメディア各社に送りつけたことになっている。しかも、警察が片山さんの携帯電話を回収したら、それと同じ写真が携帯電話から見つかった、と。たしかに、それなら片山さんは真犯人ですよ。でも、そんな写真はないんです。

 警察や検察の想定だと、片山さんはネコに首輪を付けることを目的に、1月3日に江ノ島に行ったことになっています。でも片山さんは、神社で参拝してから山頂に上がり、ネコと遊んでから、釜揚げしらす丼やたこせんべいを食べたりしている。江ノ島には数多くの監視カメラがあるそうですが、もう一度、映像をよく見てほしい。なぜ真犯人が目的達成の前後に神社に参ったり、食事をしたりするんですか。真犯人ならばもっと注意を払って行動するものでしょう。

引用:連続追及 第10弾PCなりすまし事件 特別対談佐藤博史×江川紹子 警察と検察 史上最悪の「冤罪捜査」を問う  | 経済の死角 | 現代ビジネス [講談社]

今の検察や警察の取り調べ手法は、容疑者を自白に追い込むことにおいては適合しているが、無実の人を間違って自白させる危険を常に伴っている。もし、われわれ弁護人がいなければ、片山さんは屈服させられていたかもしれない。/特別対談佐藤博史×江川紹子

佐藤 (痴漢冤罪をテーマにした映画を撮った)周防正行監督も言っていましたが、今の検察や警察の取り調べ手法は、容疑者を自白に追い込むことにおいては適合しているが、無実の人を間違って自白させる危険を常に伴っている。もし、われわれ弁護人がいなければ、片山さんは屈服させられていたかもしれない。

引用:連続追及 第10弾PCなりすまし事件 特別対談佐藤博史×江川紹子 警察と検察 史上最悪の「冤罪捜査」を問う  | 経済の死角 | 現代ビジネス [講談社]

捜査機関としての役割を放棄しているとしか思えないんですよね。おそらく、警察と検察は、自白を得ることが取り調べだと思い込んでいるのではないでしょうか。/特別対談佐藤博史×江川紹子

佐藤 ええ。それで検察も当初は冷静に取り調べをするような素振りで、録音も検討した様子があるんです。その後、態度を豹変させましたが。

江川 取り調べは、自白を得ることだけが目的ではなくて、被疑者から多くの情報を引き出すことが大事です。否認していたとしても、片山氏が犯人だと確信しているのであれば、事実についての説明をさせて、客観的事実との矛盾点を集めていけばいい。そうしないのは、捜査機関としての役割を放棄しているとしか思えないんですよね。おそらく、警察と検察は、自白を得ることが取り調べだと思い込んでいるのではないでしょうか。

 この事件は4件の誤認逮捕があって、うち2件は「虚偽の自白」をもとに誤認逮捕してしまっている。その過ちを前提に、片山氏の捜査では強引に自白に追い込むようなことはせず、公明正大な手続きを経ることが捜査側には求められています。裁判所もそれを後押しするような役割が期待されている。にもかかわらず、そういう意識が見られないことが問題です。

引用:連続追及 第10弾PCなりすまし事件 特別対談佐藤博史×江川紹子 警察と検察 史上最悪の「冤罪捜査」を問う  | 経済の死角 | 現代ビジネス [講談社]

江川 私が釈然としないのは、取り調べの録音・録画を片山氏が求めても、警察が一切応じようとしないということです。/特別対談佐藤博史×江川紹子

佐藤 私は、警察・検察は片山さんを逮捕・起訴する明白な証拠は持っていないと思います。

江川 私が釈然としないのは、取り調べの録音・録画を片山氏が求めても、警察が一切応じようとしないということです。検察に対しては、録画はせずに録音だけでも取り調べに応じると譲歩しているんですよね。

引用:連続追及 第10弾PCなりすまし事件 特別対談佐藤博史×江川紹子 警察と検察 史上最悪の「冤罪捜査」を問う  | 経済の死角 | 現代ビジネス [講談社]

片山氏が「C#」を使えると立証できても、真犯人が片山氏以外にあり得ないという証明にはならない。片山氏が犯人でないと説明がつかないような客観証拠を彼らが持っているのか、大いに疑問です。/特別対談佐藤博史×江川紹子

江川 それは、検察側が「これが決定打」というほどの証拠を持っていないからではないでしょうか。もちろん、押収したパソコン関係のデータにどのようなものがあるのかまだわかりません。遠隔操作ウイルスをつくったとされるプログラム言語「C#」について、片山氏は自分がその言語を使えないから犯人ではないと主張していますが、検察側は使えるという証言をぶつけてくるでしょう。

 ただ、最高裁の判例で状況証拠だけで有罪とするためには、その人が犯人でなければ説明がつかないものが含まれていなければならないと言っている。つまり、片山氏が「C#」を使えると立証できても、真犯人が片山氏以外にあり得ないという証明にはならない。片山氏が犯人でないと説明がつかないような客観証拠を彼らが持っているのか、大いに疑問です。

引用:連続追及 第10弾PCなりすまし事件 特別対談佐藤博史×江川紹子 警察と検察 史上最悪の「冤罪捜査」を問う  | 経済の死角 | 現代ビジネス [講談社]

そもそも、この事件では警察が4件の誤認逮捕で大失態をして威信を傷つけられた。何が何でも片山氏を真犯人として有罪にするのだという強い意志を感じますね。/特別対談佐藤博史×江川紹子

江川 検察はさらに別件で追起訴をする用意があるようで、捜査も続行中です。すぐに保釈されることは考えにくいと思います。

 そもそも、この事件では警察が4件の誤認逮捕で大失態をして威信を傷つけられた。何が何でも片山氏を真犯人として有罪にするのだという強い意志を感じますね。

佐藤 4月17日の進行協議の場で検察官が発言したことなのですが、検察官としては、この件については捜査継続中であり追起訴を予定しているので、公判前整理手続きに付すことの可否について意見を言えないし、証拠開示もしない、という答えでした。その理由は「証拠隠滅のおそれ」があるというのです。すでに起訴した事件で、捜査継続を理由に証拠の開示を断るなんて、前代未聞です。

引用:連続追及 第10弾PCなりすまし事件 特別対談佐藤博史×江川紹子 警察と検察 史上最悪の「冤罪捜査」を問う  | 経済の死角 | 現代ビジネス [講談社]

一時は不眠に悩まされ、自殺も考えるほどでした。保護室に隔離されたこともありましたが、だいぶ落ち着いてきました。彼の誕生日が5月10日なので、それまでには保釈が認められるようにしたいと考えているところです。/特別対談佐藤博史×江川紹子

何が何でも有罪にする

江川 2月10日の片山祐輔氏(30歳)の逮捕から、すでに80日近く経過しました。最近の片山氏の様子はいかがですか?

佐藤 この対談の直前にも会ってきましたが、「一日も早く自由になりたい」と言っています。一時は不眠に悩まされ、自殺も考えるほどでした。保護室に隔離されたこともありましたが、だいぶ落ち着いてきました。彼の誕生日が5月10日なので、それまでには保釈が認められるようにしたいと考えているところです。

引用:連続追及 第10弾PCなりすまし事件 特別対談佐藤博史×江川紹子 警察と検察 史上最悪の「冤罪捜査」を問う  | 経済の死角 | 現代ビジネス [講談社]

マスコミにリークする情報も底をついたか。もはや捜査当局に決定的証拠がないことは明らかだ。それでも拘束し続ける警察・検察の思惑とは/特別対談佐藤博史×江川紹子

マスコミにリークする情報も底をついたか。もはや捜査当局に決定的証拠がないことは明らかだ。それでも拘束し続ける警察・検察の思惑とは—。冤罪に詳しいジャーナリストが主任弁護人に訊く。

引用:連続追及 第10弾PCなりすまし事件 特別対談佐藤博史×江川紹子 警察と検察 史上最悪の「冤罪捜査」を問う  | 経済の死角 | 現代ビジネス [講談社]

今まで何度か人質司法の元凶は裁判官だと指摘してきたが、それが裏付けられた。>【PC遠隔操作事件】「罪証隠滅のおそれ」って何?/矢部善朗弁護士