「冤罪」タグアーカイブ

「弁護士が来るまでの間は、捜査機関には何も話さないほうがよいです。黙秘権が保証されているからです」|弁護士ドットコムトピックス

「逮捕後はとにかく、当番弁護士を呼んで下さい。当番弁護士とは、各弁護士会が行っている制度で、その日の担当弁護士が、逮捕された人に面会に行く制度です。

初回の面会は無料です。警察官(場合によっては検察官)に『当番弁護士を呼んで下さい』と伝えれば、その地域の弁護士会に出動要請が連絡され、ただちに弁護士が面会に来ます」

●弁護士が来るまでは、何も話さないほうがいい

当番弁護士を呼んでもらうよう依頼した後は、どうするのがいいのだろうか。

「弁護士が来るまでの間は、捜査機関には何も話さないほうがよいです。黙秘権が保証されているからです」

このように石井弁護士は助言する。当番弁護士が到着すれば、その弁護士と話をすることになる。

「その後の取調においても黙秘を続けたほうがよいのか、あるいは嫌疑を晴らすために積極的に事情を説明したほうがよいのかについては、面会にきた弁護士から助言を受けることができます。

また、初回面会後も弁護士に弁護活動を依頼すべきかどうか、その場合の費用はどうなるかについても、弁護士に相談して下さい。経済的事情により負担が少ない方法で弁護士を頼める制度もありますから、そうした制度の説明も受けられます」

ほとんどの人にとって、逮捕というのはめったにない経験だろうが、人生に「絶対」はない。もしもそんなことが起きたときのために、「当番弁護士を呼んで、それまでは黙っている」という対処法を頭に入れておくといいだろう。

引用:身に覚えのない事件で逮捕されたら、どう対応すればいいのか?|弁護士ドットコムトピックス

冤罪を生んだ責任の99・9%は捜査機関に <今村元・富山弁護士会会長声明 ・2008年頃>- 日暮れて途遠し(過去記事の転載から)

2012年12月9日
以下は平成21年の9月頃からプライベートモードにした次のブログからの転載記事になります。なお、引用した記事は現在リンク切れになっているようです。また、このえん罪事件は日本全国の弁護士が多数終結し、1億円を超える額の国家賠償請求の裁判をやっていますが、全国ニュースレベルで見かけることはほとんどなく、知らない人が多いかと思います。一般の関心や認識の程度という意味でも参考になる問題と思います。

冤罪を生んだ責任の99・9%は捜査機関に – 日暮れて途遠し http://d.hatena.ne.jp/hirono_hideki/20080401/1207060520

引用開始

富山・強姦冤罪事件:弁護人の責任言及せず 県弁護士会が報告書公表 /富山

http://mainichi.jp/area/toyama/news/20080329ddlk16040450000c.html

富山・強姦冤罪事件:弁護人の責任言及せず 県弁護士会が報告書公表 /富山
 県警による強姦冤罪(ごうかんえんざい)事件で、県弁護士会は28日、経緯の調査結果や再発防止策をまとめた報告書を公表した。当時の国選弁護人の責任には言及せず、記者会見を開いた今村元・会長は「冤罪を生んだ責任の99・9%は捜査機関にあり、弁護士の処分や注意は行わない」と述べた。

 報告書は、被害者の柳原浩さん(40)が、逮捕直後の当番弁護士の接見から国選弁護士選任までの約1カ月半の間に、強圧的な取り調べを受けて「自白」に至ったと指摘。「この空白が冤罪の一因」とし、当番弁護士の派遣回数を増やすことや、否認している際は弁護士の私選を勧めることなどを提言した。

 捜査機関に対しては、警察署内に容疑者を拘置する「代用監獄」の廃止や、取り調べの全面可視化を要求。弁護士にも「自身が自白偏重に陥っていないか、肝に銘じるべきだ」として、容疑者が自白に転じた際は慎重に事情を聞くよう求めた。

 県弁護士会は冤罪発覚直後の07年1月に調査委員会を設置。聴取内容の公開を巡って柳原さんと対立し、本人からは話を聞けなかった。【茶谷亮】

毎日新聞 2008年3月29日 地方版

昨夜、今枝弁護士のブログで知りました。さっそく元検弁護士のブログで、この問題のことをコメントしたのですが、まったく無反応でスルーされていました。

http://www.yabelab.net/blog/2008/03/31-140917.php

No.3 廣野秀樹さん | 2008年3月31日 20:20 | CID 131051  (Top)
 今枝弁護士が細かく取り上げていますが、とても参考になります。

富山氷見事件について弁護士会報告書

http://beauty.geocities.yahoo.co.jp/gl/imajin28490/view/20080331/1206928539

県警による強姦冤罪(ごうかんえんざい)事件で、県弁護士会は28日、経緯の調査結果や再発防止策をまとめた報告書を公表した。当時の国選弁護人の責任には言及せず、記者会見を開いた今村元・会長は「冤罪を生んだ責任の99・9%は捜査機関にあり、弁護士の処分や注意は行わない」と述べた。

 いくらなんでもそれはないだろうと感じました。安だ弁護団の一派が、特別な存在とばかり思っていましたが、こちらのほうがより問題性が高そうです。
 おまけに富山県はお隣なんです。以前は仕事でよく言っていました。なかなか特徴のある県民性でもありますが、これじゃ刑事弁護のみならず、北陸の恥さらしです。

 エントリ名は弁護士会の裁判員制度対応状況ですが、私が水を差してしまったのか、盛り上がりに欠け、一日も立たないうちにお蔵入り状態みたいです。最後のコメントも3月31日になったままです。(4月1日23時30分現在)
 想像以上に、脆弱な基盤の上に成り立った歪な世界なのかもしれません。

引用終了

引用:冤罪を生んだ責任の99・9%は捜査機関に <今村元・富山弁護士会会長声明 ・2008年頃>- 日暮れて途遠し(過去記事の転載から) | 告発-金沢地方検察庁御中_2012

無実の被疑者に対して無理矢理自白をさせる捜査官が存在するという前提<元検 弁護士のつぶやき>



取調べの可視化

 取調べの可視化の議論が活発化しているように感じられます。
 取調べの可視化というのは、具体的には、取調べ状況を録音や録画などの方法により客観的に記録し、それを弁護士や裁判官に開示することだと理解しています。
 議論の活発化の背景には裁判員制度があると考えられます。
 裁判員制度の裁判においては、証拠をできるだけシンプルにすることが要請されており、自白調書の任意性や信用性という問題をできれば裁判員に判断させたくない(はっきり言って裁判員には荷が重い)からだと思います。

 しかし、取調べの全てを録画してそれを開示することには到底賛成できません。
 その最大の理由は、被疑者及び第三者のプライバシー侵害の危険が大きすぎるからです。
 取調べにおいては、被疑者の全人生、従って被疑者の人生に関わった全ての人の言動が話題に上り得るのです。

 では現状のままでいいかと言いますと、私も、法廷で自白調書の任意性について不毛な議論が延々と続けられる状況はなんとかしなければならないと思いますし、この問題がクリアできない限り裁判員制度も機能不全に陥るだろうと予測しています。

 そこで私案ですが、現在、取調べにおいて弁護人の立会いは認められていませんが、調書の作成時においてだけ弁護人の立会いを認め、弁護人が連署した調書の任意性は原則として争うことができなくなることにしてしまうのです。

 例によって思いつきの案ですが、いかがでしょうか。
 取調べの可視化はそれ自体が重要なのではなく、自白調書の任意性の確保の問題だと思うのです。

 この問題を考えるにあたって確認しておきたいことが一つあります。
 取調べの可視化が問題になるのは、
 無実の被疑者に対して無理矢理自白をさせる捜査官が存在するという前提があるのですが、
 真犯人の被疑者に対して否認を勧める弁護士も存在するということも考慮に入れるべきでしょう。
モトケン (2005年11月14日 12:37) | コメント(24) このエントリーを含むはてなブックマーク  (Top)

引用:取調べの可視化 – 元検弁護士のつぶやき

送信者 元検弁護士のつぶやき

送信者 元検弁護士のつぶやき

冤罪の原因について考えてみようと思ったからです<元検弁護士のつぶやき>



刑事司法の犯罪抑止力と冤罪

 刑事司法の目的は、言うまでもなく犯罪を減らすことにあります。犯罪をなくすこと、と言いたいところですが残念ながらそこまで楽観的にはなれません。

 ではどうのような手段で犯罪を減らそうとしているかといいますと、刑罰によって減らそうとしているわけです。

 つまり、
犯罪を犯した者に対しては刑罰を科すことによって(刑務所に入れることによって)二度と犯罪をする気にならないようにすることによって、
将来犯罪を犯すかも知れない人に対しては、刑罰を予測させることによって思いとどまらせることによって
犯罪を減少させようとしているのです。

 要するに、刑罰による威嚇力、もっとわかりやすくいうと刑罰という脅しによって犯罪を防ごうとしているのです。

 しかし、この脅しは、犯罪を犯した者は必ず警察に捕まって裁判にかけられて有罪になる、という状況がないと機能しません。
 ひったくりを繰り返しても捕まらなければさらに繰り返すことになり、それを見た人間は、捕まらないなら俺もやろう、ということになって犯罪は増えていってしまいます。

 つまり刑事司法の犯罪抑止力は、まずは捜査機関による検挙率が高くなければ機能しないのです。
 そして、犯罪検挙のための主要な機関は警察であるわけです。
 そのため国民は警察に対して高い犯罪検挙率を求め、警察もそれに応えようとします。

 しかし警察が捕まえただけではまだまだ目的は達せられません。
 犯人が裁判で有罪になってはじめて威嚇力は発揮されます。
 刑事裁判においては、警察が収集した証拠を踏まえて検察官による立証活動が重要になってきます。

 なぜこんなことを書いたかと言いますと、冤罪の原因について考えてみようと思ったからです。
 実は、私の後輩の高校生から冤罪がどうして生じるのか、という質問を受けていました。
 簡単に答えられそうな質問に見えるかも知れませんが、すぐには明解な答を出すことができませんでした。
 依然として明解ではありませんが、私には冤罪というものは犯罪抑止力のダークサイドのように思えます。

 まだまだ考えがまとまっていませんので、今日はこれくらいにしておきます。
モトケン (2005年11月19日 22:00) | トラックバック(2) このエントリーを含むはてなブックマーク  (Top)

引用:刑事司法の犯罪抑止力と冤罪 – 元検弁護士のつぶやき

送信者 元検弁護士のつぶやき

送信者 元検弁護士のつぶやき

現場の検事に萎縮効果を生じさせますから、そんなことはできませんし、してい ないはずです<元検弁護士のつぶやき>



検事と無罪

 k_penguinさんからトラックバックをいただいた。
 記事のタイトルは「裁判員制度は冤罪を減らすか」です。
 冤罪問題は、裁判員制度との関係だけでなく、少年事件も含めて考えますと現在でもほとんど日常的に生じているかも知れない問題です。

 がしかし、この投稿ではk_penguinさんの追記に対して非公式に答えたいと思います。

捜査担当の検察官と、公判担当の検察官は原則違う人だ。

 この点は以前に書いたかと思いますが、大都市地検では原則ですが、地方地検では捜査担当の検察官と、公判担当の検察官が同じというのが原則です。

無罪判決が出たら、責任をかぶるのは公判担当だ。 と、いうわけで、やっぱり無罪判決は出しづらい。

 裁判官が無罪判決に関与した検察官がどのような不利益を受けると認識しているのかよく分かりませんが、少なくとも個人的なしがらみで「無罪判決は出しづらい」ということはないと思います。
 個人的なしがらみを問題にするならば、捜査担当の検察官と、公判担当の検察官が違うほうが無罪判決を出しやすいと思います。
 無罪判決の原因は、公判検事より起訴検事にある場合のほうがはるかに多いからです。

 ところで、無罪判決を出した検察官が責任を問われるかどうか、無罪判決が昇進に影響するかどうか、についてですが、全体的な印象としてはあんまり関係なさそうです。
 さらに詳細に述べれば、無罪の理由と無罪判決の数によりけりだと思います。
 検事として基本的なミスをして無罪判決を出すということを繰り返せば、その検事の能力を疑われて昇進できなくなるということは十分あります。

 しかし、無罪判決を出したことによって検事が公務員としての懲戒処分を受けた、という話は聞いたことがありません。

 これは、検察庁の組織原理の観点から見ても当然のことであり、無罪判決を出したことによって懲戒処分を受けたりすれば、捜査検事としてはちょっとでも無罪の可能性のある事件は起訴しなくなってしまうことになってしまいますから、つまり、現場の検事に萎縮効果を生じさせますから、そんなことはできませんし、していないはずです。
モトケン (2005年11月20日 11:15) | コメント(3) | トラックバック(1) このエントリーを含むはてなブックマーク  (Top)

引用:検事と無罪 – 元検弁護士のつぶやき

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冤罪の構図がいまだに存在することを実証したものといえます。<元検弁護士の つぶやき>



鹿児島県警、ウソの供述を強要

鹿児島県警、ウソの供述を強要 県議選違反事件(asahi.com 2006年01月05日05時57分)

 この事件については落合先生が「日々是好日」で適切な分析をされているのでほとんど付け加えることがないのですが、私なりに感想めいたものを書くことにします。

 報道によれば、県警が作成した事件チャート図が流出していたり、捜査関係者の一人は取材に対し、この男性らを容疑者に仕立てようとしたことを認めていたり、かなり異例な感じがします。

 取材に応じた捜査関係者というのは相当ばか正直な人なのかな、と一瞬思いましたが、県警内部の出世争いが背景にあるのかな、という深読みの可能性もありかもしれません。
 つまり、足の引っ張り合いですね。
 あくまで憶測です。

 落合先生は知能犯捜査における筋読みを言われていますが(私も全く同感ですが)、ことは知能犯捜査に限らず、強行犯捜査(例えば、犯人不明の殺人事件など)にも同様のことが言えます。

 今回の事件は、警察が、自己の描いた筋を反省することなく、証拠を間違った筋に合わせようとすることがある、つまり虚偽自白を強要することが最近でもあるということを証明したものであり、冤罪の構図がいまだに存在することを実証したものといえます。
モトケン (2006年1月 5日 11:59) | コメント(3) | トラックバック(2) このエントリーを含むはてなブックマーク  (Top)
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ろーやーずくらぶ – 鹿児島県議選公選法違反事件 (2006年1月 5日 16:14)

 「踏み字」事件と呼ばれるような違法な自白強要のあった事件ですが、立件を見送られた被疑者についても、虚偽自白を強要していたことが明らかになりました。朝日新… 続きを読む
kojのとりあえず日記 – [本]冤罪の構図 新風舎文庫 江川 紹子 (著) (2006年3月 5日 23:47)

なぜ僕はこの本を読むことにしたのか…ぜんぜん思い出せない。 あ、今思い出した。たぶん、前に読もうと思ってamazon.co.jpのウィッシュリスト… 続きを読む
コメント(3)
No.1 y_okamura さん | 2006年1月 5日 14:25

私は,当番弁護士から拘わりましたから,冤罪であることは,初回接見でわかりました。
担当検事にも,田舎警察を信用するなと忠告したのに,馬鹿げた起訴をしてしまいました。
この県議選を,接見国賠とあわせて,恥の上塗り事件と呼んでいます。
No.2 モトケン さん | 2006年1月 5日 16:11

これが例の事件でしたか。
今の公判検事はご苦労なことです。
No.3 paru さん | 2007年2月 2日 02:40

始めてここにきました。

困って検索してました。
鹿児島の某市民病院医療訴訟を思っております。

しかし医療専門の弁護士さんを探せずに今に至ってます。
もし・・・
もし・・・話だけでも聞いてくださる方をご存知ならと投稿しました。

この場をお借りをして申し訳ございません。

引用:鹿児島県警、ウソの供述を強要 – 元検弁護士のつぶやき

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匿名の投稿ですから疑いだしたらキリがありませんが、信頼できる投稿と<元検 弁護士のつぶやき>



鹿児島県警自白強要事件(その4)

 その3を書いたときに関連記事はないかとブログを検索したところ、アナウンサー(なのかな?)の長野智子さんのブログでも触れられていました。

 今日も見てみましたところ、問題の事件で被疑者扱いされた方のお孫さんという方がコメントを書いておられます。

 おじいさまは昨年5月に亡くなられたとのことですが、そのときの警察の対応もさることながら、こぼれ話として書かれている一部マスコミの言動にはあきれた次第。

 匿名の投稿ですから疑いだしたらキリがありませんが、信頼できる投稿と思われますので紹介いたしました。
モトケン (2006年1月12日 01:18) このエントリーを含むはてなブックマーク  (Top)

引用:鹿児島県警自白強要事件(その4) – 元検弁護士のつぶやき

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国選弁護士の報酬が安すぎるという問題もあることを指摘しておきます。<元検 弁護士のつぶやき>



消極的な弁護?

「国選弁護人、何もせず」富山冤罪の日弁連調査で柳原さん(やふーニュース 読売新聞配信)

 柳原さんは、2002年4月の逮捕直後に行われた1回目の接見について、「弁護士なら助けてくれると思い容疑を否認した。『調査する』と言ってくれたが、その後、何の連絡もなく、次の接見では被害者2人に被害弁償金を支払うよう勧められた」と明かした。「接見は2回でいずれも10分程度だった」とし、消極的な弁護のあり方を非難した。

 その後の公判の推移がこの陳述を裏付けているように思われます。
 弁護士会からは、刑事弁護の活性化ということが叫ばれていますが、その根っこの部分にこのような問題があるようです。

 但し、このような問題(消極的弁護またはもっと直裁に言えば手抜き弁護)の背景には、国選弁護士の報酬が安すぎるという問題もあることを指摘しておきます。
モトケン (2007年10月14日 17:17) | コメント(25) このエントリーを含むはてなブックマーク  (Top)

引用:消極的な弁護? – 元検弁護士のつぶやき

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冤罪を1件でも減らすためには、世間の批判を一身に浴びるかのような被告人に こそ<元検弁護士のつぶやき>



刑事弁護士をもっと

冤罪防止 “刑事弁護士”をもっと(中日新聞社説 ウェブ魚拓 ボツネタ経由)

 裁判員裁判の実施、被疑者国選弁護の拡大を前に、「刑事に強い」弁護士の大量育成が急がれる。冤罪(えんざい)防止のためには、使命感はもとより、豊かな知識と弁護技術を兼ね備えた弁護士が必要だ。

 私が、橋下弁護士による懲戒扇動問題を強く批判している大きな理由はここにあります。
 豊かな知識と弁護技術を兼ね備えた弁護士は一朝一夕には養成できません。
 刑事弁護に熱意をもって取り組む若手弁護士の絶対数が必要です。

 弁護活動に対する被疑者、被告人の不満はしばしば聞く。日弁連は重く受け止め、弁護活動を客観的にチェックしなければならない。

 個々の事件の弁護活動の当否を判断するのはとても難しいのですが、富山県の強姦冤罪事件などを見ますと、問題のある弁護活動の検証作業は必要であろうと思われます。

 しかし、弁護活動に対する批判・検討は、被害者側に偏った不十分な情報に基づく感情的な批判であってはならないと考えます。
 その意味で、マスコミの報道に触発された市民感情を正当化の根拠とするような懲戒扇動が頻発するような事態が生じるとすれば、弁護活動に対する正当な批判・評価を妨げることになるばかりでなく、刑事弁護に対する無理解と誤解を助長し、これから刑事弁護に取り組んでみようとする若手弁護士の意欲を大きく減殺する結果になることを強く危惧するのです。

 冤罪を1件でも減らすためには、世間の批判を一身に浴びるかのような被告人にこそ、刑事弁護が最も有効に機能すべきであると思います。

 但し、私は弁護人のマスコミ対応が不十分であることをもって懲戒理由と考えることには強く反対しますが、裁判員制度を視野に入れた弁護技術としてマスコミ対策の重要性が増加していることは事実であると感じています。
 その点については別に述べてみたいと思います。
モトケン (2007年10月31日 01:11) | コメント(53) このエントリーを含むはてなブックマーク  (Top)

引用:刑事弁護士をもっと – 元検弁護士のつぶやき

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そのような検事は冤罪の山を築く可能性があります<元検弁護士のつぶやき>

 初めて読んだ記事のように思いました。コメント禁止にされる前のエントリのはずですが、自分のコメントもないようです。


検察側が自白調書撤回

 これまで何度か紹介していますが、有力な弁護士ブロガーの一人の落合弁護士は私と同じヤメ検ですので、特に刑事事件については感覚に似たようなところがあります。
 今回取り上げるのは、「夫バラバラ殺人、検察側が自白調書撤回 東京地裁 歌織被告は任意性否定 」です。

 落合弁護士は中日新聞の記事を以下のように引用されています。

検察側は「犯罪事実は被告人質問で十分立証できた」として、証拠請求していた捜査段階の被告の自白調書などを撤回した。検察側が被告の供述調書の請求を取り下げるのは極めて異例。裁判員制度を意識し、裁判の迅速化を図る目的とみられ、今後、同様のケースが続くとみられる。 一方、歌織被告は被告人質問で「警察官や検察官の取り調べで、怒鳴られたり脅されたりして、不本意な調書を作られた」と述べ、供述が任意ではなかったと主張。取り調べの際に検察官から「風俗で働いていた。犬畜生と同じだ。おまえの事件なんて、どうせ男とカネなんだろ」などとののしられたと述べた。検察官の作成した調書の内容を否定し続けると、以前中絶した時の胎児のエコー写真を机の上に並べられて「法廷でこの写真を出していいのかと脅された」と訴えた。

 検事の取調べ状況に関する被告人の供述に関するさらに詳細な報道として産経ニュースがあります。

 歌織被告「検事は『風俗なんかで働いていた汚い奴め、お前は犬畜生と一緒で生きている価値がない。お前の刑を決めるのはおれだ。おれの前で頭を下げてみろ』と、そういうことを言われ続けた。それに対し、私が『違う』とずっと言い続けていると、終いには私が以前に堕ろした子供のエコー写真を並べて、『法廷でこの写真を出されてもいいのか。法廷でマスコミの前に出してやるからな』と言われた」

 産経ニュースを流し読みした限りにおいて、検察官はこの被告人の供述に対して何の反対質問もしないで被告人質問を終わらせています。

 そうなりますと

 自白調書の任意性を争われ、その理由を具体的に述べられた後に、検察官が請求を撤回すれば、やはり任意性に問題がある自白調書だったから、という印象を裁判所に与える可能性が高いように思います。(落合ブログ)

 となるのは自然な流れだろうと思います。
 私も、被告人が言うような取調べを検事がした可能性が高いな、と思います。
 落合弁護士は「裁判所に」と書いていますが、裁判員裁判が始まれば当然「裁判所」の中には裁判員が含まれてきます。
 産経のような法廷のやりとりを詳細に報じるメディアによって、国民の多くにも同様の印象を与える可能性が生じてくるでしょう。
 そしてその中から別の事件の裁判の裁判員が選任されてくることになります。
 検察はその点をどう考えているのでしょうか。

 最近、公判担当の検事(公判部の検事)と話をしますと、裁判員裁判に向けての準備やトレーニングをかなりやっている感じがします。
 しかし、捜査部(刑事部など)の検事がどう考えているのかについて、今回の被告人質問ははなはだ疑問を抱かせます。

 はっきり言いまして、取り調べ検事が報道されたような言動を実際にしたのであれば、検事の取調べとして最低です。
 検事としての適格性がないと言ってもいいです。
 被疑者を侮辱し、恫喝することによって真実を語らせることができると思っているとしたら、極めて危険なことです。
 そのような検事は冤罪の山を築く可能性があります。

 取調室というのは密室です。今のところは。
 検事と立会事務官と被疑者しかいません。
 被疑者を連れてくる警察官もいるのが普通ですが、検事が指示すれば退席させることも可能なはずです。
 いずれにしても被告人から見て味方はいないという状況です。

 こういう部屋で取り調べをしていますと、「俺が一番偉いんだ。俺はこの部屋では何を言ってもかまわないんだ。俺が想定している事実を語らせればいいんだ。俺の書く調書に署名させればいいんだ。」と思ってしまう検事がいても不思議はありません。
 被告人の供述の中の検事はまさしくそういう検事です。

 もちろん、被告人を取り調べた検事が被告人が供述したような取調べをしたのかどうかについては断定することができる資料を持っていません。
 上司は担当検事本人に問いただしているかも知れませんが。

 しかし、問題は、裁判官、裁判員、報道を読んだ国民(裁判員予備軍)が被告人の話を信用するかどうかです。(※)

 さて、産経の記事を読んだ皆さんはどう思われたでしょうか。
 こういう調べが行われた可能性はあるな、と思った人がかなりいるのではないかと想像しています。

 つまり、取調べ検事としては、自分が取り調べた被疑者に、法廷でこんなこと(一般論的には任意性や信用性に疑問を生じさせるような内容)を口にさせるような取調べをしてはいけないのです。

 取調室は密室かも知れません。
 しかし、検事が取調室で発した言葉は、すべて被告人の口によって法廷で語られる可能性があるのです。
 ですから、こんな取調べは絶対にしてはいけないのです。
 ここまでひどくなくても、被告人に誇張されたり揚げ足をとられるような調べをしてはいけないのです。
 
 このように言うと、一部の若手検事から、「じゃあ、どうすればいいんだ。」という声が聞こえてきそうですが、そういう検事は落合弁護士のブログを読んで「人間力」というのはどういうことなのかということを自分で考えていただきたいと思います。
 私が任官した直後に、厳しい取調べをすることで有名な検事ほど任意性を争われない、という話を聞いたことがあります。
 これだけ書くと誤解が生じそうですが、要するに、検事に被疑者を納得させる力があるかどうかだと思います。

(※)
 まったく任意性に問題がない取調べをしたとしても、被告人が嘘八百をでっちあげて任意性を争う可能性はあります。
 今回の事件で検察官が被告人調書の請求を撤回したことを知った別事件の被告人の中には、ともかくひどい取調べを受けたと法廷で言えば自白調書をちゃらにできると考える者が出てきても不思議はありません。
 そうなると、取調べの可視化が一気に加速するのではないでしょうか。
 いずれにしても、まともな調べをすることが大前提ですが。
モトケン (2008年2月14日 17:22) | コメント(30) このエントリーを含むはてなブックマーク  (Top)

引用:検察側が自白調書撤回 – 元検弁護士のつぶやき

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