村木厚子さんが巻き込まれた事件では、”共犯者”たちが、村木さんの関与を認める供述調書を作成している。不幸中の幸いで、重要証人が法廷でその調書を覆す証言としたが、捜査段階では検察側ストーリーに沿った供述をするよう、あの手この手が使われていた。/ジャーナリスト江川紹子

■村木事件で暴かれた検察側ストーリーに沿った供述

現在は厚生労働事務次官を務める村木厚子さんが巻き込まれた事件では、”共犯者”たちが、村木さんの関与を認める供述調書を作成している。不幸中の幸いで、重要証人が法廷でその調書を覆す証言としたが、捜査段階では検察側ストーリーに沿った供述をするよう、あの手この手が使われていた。

そのような取り調べの末に「合意」がなされ、弁護人もチェックできず、法廷でも虚偽供述が維持されたら……。このような事態は想定しておかなければならない。これを防ぐためには、可視化するしかないだろう。

今回の法案では、取り調べの可視化に関しても法制化がなされることになっている。しかし、その対象は裁判員対象事件と検察の独自捜査事件(いわゆる特捜事件)のみ。全事件の2%であり、「合意制度」の対象事件は可視化法制化の対象ではない。

「合意制度」を活用する可能性のある事件の被疑者の取り調べは、可視化するべきではないか。少なくとも、音声の録音だけでも行って、その「合意」が適切に行われたと示せるようにしておくべきだ。

引用:【江川紹子の事件簿】FIFA汚職と刑事訴訟法改正案──改めて問われる取り調べ可視化 – Mulan