弁護士は「検察の取り調べの実態を社会に伝えたかった」と説明している。捜査の在り方を検証するという提供目的には、十分な公益性があると言えよう。
目的外使用の禁止を巡っては、法改正時に、日本弁護士連合会が正当な理由があれば禁止対象から外すよう求めた。日本新聞協会も「取材の制限につながる危惧が大きい」との見解を表明した。
国会でも議論となり、違反が疑われる場合にも、「行為の目的や態様、関係者の名誉侵害の有無などを考慮する」との条文が追加された経緯がある。
大阪地検はこうした観点からの精査を十分行ったのだろうか。
3月には、被害者が写っている実況見分写真などの開示証拠を動画サイトに投稿したとされる男が起訴された。悪質なケースについては厳しく対処すべきだ。
しかし、公益目的の情報提供まで検察が殊更に問題視するのであれば、取材・報道の自由を侵害することにつながろう。
公権力を使って収集した証拠は検察の独占物ではなく、公共財であることも忘れてはならない。
(2013年6月4日01時12分 読売新聞)